第2回 トイレ問題は命にかかわります
「一人一人の健康被害」と「集団での感染症」
特定非営利活動法人日本トイレ研究所 /
代表理事
加藤 篤
加藤 篤
1972年、愛知県生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを展開している。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組んでいる。日本トイレ大賞(内閣官房)審査委員、避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)などを務める。主な著書に「うんちはすごい」(株式会社イーストプレス)、「うんちさま」絵本(金の星社)などがある。
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1. トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態
前回の記事では、「水洗トイレはシステムであること」「トイレは、備えや支援から抜け落ちやすいこと」「排泄は待ったなしであること」を書きました。
簡単にまとめると、大きな地震や水害のときは水洗トイレが使えなくなります。ですが、発災後6時間以内に約7割の人がトイレに行きます。トイレの備えがなければ、トイレが大小便で一杯になり劣悪な衛生状態となります、という内容でした。
■第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?
もちろん劣悪なトイレは超不快なので、それだけでも問題なのですが、そこが問題の本質ではありません。先に結論を言うと、トイレ問題は命にかかわります。トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態とは「一人一人の健康被害」と「集団での感染症」です。いずれも関連死につながる重大な課題として認識すべきです。
では、1つずつ解説します。
2. トイレ問題が起因となる一人一人の健康被害とは?
1つ目は「一人一人の健康被害」です。
排泄は、自律神経の中でも副交感神経が担っています。副交感神経はリラックス状態のときに優位になる神経です。つまり、排泄には安心できるようなトイレ環境が必要ということです。
ですが、被災者の方々に災害時のトイレのことを聞いてみると「真っ暗で怖い」「寒くて(暑くて)外のトイレに行きたくない」「ものすごく混んでいる」「男女分けされていない」「和式トイレなのでしゃがめない」などの困りごとが挙げられます。
人によってトイレが使いづらいと感じる内容は異なりますが、1つでもトイレに行きたくない理由ができてしまうと、できるだけトイレに行かなくて済むように、水分摂取を控えてしまいます。ただでさえ極度のストレスで弱っている中、水分摂取を制限してしまうと、どうなるか分かりますか?
血圧上昇、体温低下、脱水などで体調を崩してしまいます。それが引き金となり、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓、誤嚥性肺炎などで死に至ることもあります。
つまり、トイレが原因で命を落としてしまうのです。
だからこそ、災害時にも安心して使えるトイレが必要です。
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