核実験、ミサイル発射実験は時期的に前後して実施されることが多く、米国大統領選挙の年、または米国大統領就任1年目に実施されることが多い

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】

1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
 (シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)
7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生


【予測されるリスク】
・金正恩体制における北朝鮮の際限のない瀬戸際外交の拡大
・国際社会からの孤立化 ⇒ 経済的低迷の長期化
・朝鮮半島における軍事的衝突の可能性の拡大 など

【背景等】
北朝鮮はこれまでも、現状の体制維持を目的に、米国との個別交渉、6ヶ国協議等を通じて妥結を図るも、その後それを反故にし、核実験やミサイル発射実験などを通じ、米国・韓国との間で緊張関係を作る等の瀬戸際外交を繰り返しています。そのため、国際社会から孤立化している状況となっています。

■核実験
・2006年10月:北朝鮮核実験(第1回)
・2009年5月:北朝鮮核実験(第2回)
・2013年2月:北朝鮮核実験(第3回)
・2016年1月:北朝鮮核実験(第4回)
・2016年9月:北朝鮮核実験(第5回)

■ミサイル発射実験
・1998年8月:光明星1号
・2006年7月:スカッド、ノドン、テポドン2号の弾道ミサイル計7発
・2009年4月:光明星2号
・2012年4月:光明星3号1号機
・2012年12月:光明星3号2号機
・2016年2月:光明星4号


核実験、ミサイル発射実験は時期的に前後して実施されることが多く、米国大統領選挙の年、または米国大統領就任1年目に実施されることが多いのが実情です。また、2011年12月に発足した金正恩体制となってからは、頻度が大幅に増加しており、その度に国連安保理から安保理決議、声明等が発出され、経済制裁等が強化されていますが、依然として繰り返されている状況です。そのため、2017年においても、再度実施される可能性が高いと言えます。

一方、国内経済は疲弊し、脱北者も増加しているとされ、一部高級幹部の脱北者も増えているとも言われています。そのため、北朝鮮としては国内での引き締めを強化すると共に、米国、韓国等に強硬な姿勢を見せることに腐心している状況です。

しかしながら、政治的腐敗、経済的不振、社会的不安等が加速しており、体制崩壊の危険性が高まるのに伴い、軍事的行動に出る可能性も否定できない状況です。さらに、昨今の韓国の朴槿恵大統領をめぐるスキャンダルは国会における弾劾訴追の可決に伴う大統領権限の停止にまで発展しています。場合によっては、2017年12月に予定されている韓国大統領選挙が前倒しになる可能性もあり、2017年に朝鮮半島情勢が急激に流動化、緊張化する可能性が高いと言えます。

(了)