2016年にフランス・ニースで起こったトラックによるテロも単独犯によるものだった(出典:flicker)

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】
1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
(シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)
7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生

 

【予測されるリスク】
・Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによる世界的なテロの頻発
・中東地域・欧米諸国等でのテロ脅威の拡大とテロ発生の可能性の拡大
・シンガポール等これまでテロ脅威の低かった国におけるテロの発生の可能性等

【背景等】
現状における世界のムスリム人口比率は23.2%とされていますが、避妊を否定しているイスラム圏での出生率は宗教別で見ると最も高くなっているため、今後もムスリム人口の増加が進展するとされています。更に欧米では若者層を中心に、イスラム教への改宗者も多いと言われています。

 一方イスラム圏では資源の有無等に伴い、格差が拡大しています。今後グローバル化が更に進展すれば格差は一層拡大することは必至であることから、イスラム社会が不安定化する要素が大きいと言えます。特に過激なイスラム原理主義思想が拡大することは、今後も過激なイスラム原理主義テロ組織の活動を活発化させることとなります。

また、ICTの進展に伴い、テロ組織の活動が多様化しています。最近においては、Home Grown Terrorist(生まれ育った国で活動するテロリスト)、Lone Wolf Terrorist(組織に属さない個人テロリスト)の人数および活動範囲が拡大する傾向にあります。更にイスラム国(IS)のように世界の若者層を取り込む等、テロ組織の形態自体も多様化しています。この傾向は昨今のISへの周辺国等による攻勢で弱体化していることが逆に、Home Grown Terrorist、Lone Wolf Terroristによるテロ脅威を世界的に高めていると言えます。

特に、中東地域・欧米諸国等でのテロ脅威の拡大が懸念されます。この背景には、昨今の欧州諸国における外国人や移民排斥の動き、極右政党の勢力の拡大があります。

そのため2017年においても、過激なイスラム原理主義テロ組織等の活動範囲の拡大、当該組織によるテロの増加は不可避であると予測されます。特に2017年は、これまでテロ事件が皆無であった国・地域でのテロの可能性が非常に高くなっていると言えます。

(了)