イスタンブール市街。トルコは2017年も不安要因を抱える

近年における世界情勢は、政治、経済、社会、全ての面で流動化しています。2017年に顕在化するであろう10のリスクを、以下の通り予測しました。前回に引き続き、一つずつ解説を行います。

【2017年グローバルリスク予測】

1.    グローバリゼーションの更なる進展と世界的な社会的不安の拡大
2.    欧州諸国における右傾化傾向の高まり
3.    国際機関の更なる機能低下
4.    中国情勢の不安定化
5.    朝鮮半島情勢の緊張化
6.    中東情勢の不透明化
 (シリア・イラク・トルコ・サウジアラビア・イラン等)

7.    米国の国際的なプレゼンスの低下
8.    ロシアの孤立化
9.    Homegrown Terrorist/Lone Wolf Terroristによるテロの増大
10.    自然災害の増加・新たな感染症の発生

 

【予測されるリスク】
・シリア情勢の混迷化(イスラム国(IS)⇔反シリア政府勢力⇔クルド人⇔周辺国⇔関係国)
・ イラク情勢の不安定化(シーア派⇔スンニー派対立)
・ イエメン情勢の混乱(サウジアラビア⇔イラン)
・ トルコ情勢の不透明性の拡大(クルド人関係/世俗主義・軍部との関係等)
・ サウジアラビア⇔イランの関係の悪化(シーア派⇔スンニー派対立)
・ サウジアラビアにおける政治体制の不透明性等

【背景等】
2017年において、最も激動すると思われる地域のひとつが中東です。現状のイスラム国(IS)を取り巻く環境が急変しており、それに伴い、周辺国や関係国との関係・連携が不透明化する可能性があります。特に、トルコについては、イスラム国(IS)が急速に勢力を弱体化させた場合、クルド人との関係が緊張化する等の可能性があり、予断を許さない状況です。

 さらにトルコの場合、建国以来の世俗主義的な政治体制において、現状のエルドアン政権が宗教色の強い政権となっており、2016年7月には、軍部によるクーデター未遂事件も発生しています。この背景には、現状のエルドアン政権に軍部が不満を持ち、さらに一般市民にもそのような不満があることが挙げられます。そのため、今後も同様の状況が発生する可能性は否定できない状況です。

さらにシリアおよびイラクなどにおけるシーア派(含:アラウィー派)とスンニー派(含:ワッハーブ派)の対立についても不透明性が高まっており、加えてイエメンにおける親サウジアラビアと親イラン勢力との戦闘激化などに伴い、シーア派とスンニー派の対立が国家間の紛争を助長する可能性が高いと言えます。特に、イランとサウジアラビアについては、2016年1月に起きたテヘランのサウジ大使館襲撃事件以降、関係が悪化しており、修復の兆しが見えていないことも問題の長期化を助長しています。

一方サウジアラビア国内においては、2015年1月、アブドッラー第6代国王の崩御に伴い、サルマン皇太子が第7代国王に即位し、ムハンマド・ビン・ナーイフ(サルマン国王の甥)副皇太子が皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン(サルマン国王の子息)国防相が副皇太子に叙任され、指導者の世代交代が進んでいます。しかしながら、急速な世代交代に伴い、王室内での権力闘争が激化しているとも言われており、米国や近隣諸国との関係等の諸問題を背景に、急激な変化の可能性も指摘されています。

また6月にはイラン大統領選挙が予定されており、欧米との関係を維持する現政権が打倒され、宗教色の強い政権が樹立された場合には、周辺国との関係を含め、流動化する可能性も否定できない状況です。

(了)