2020/01/08
知られていない感染病の脅威
季節性インフルまん延を予防
ところで1月となり、インフルエンザは全国的に猛威を振るっています。インフルエンザ対策として予防が何よりも大切です。前々回に寒冷ストレスを受けない対策をとることの重要性に触れました。今回は、高齢者など多くの人たちが生活をしているさまざまな施設でのインフルエンザ予防対策について考えてみたいと思います。
施設で暮らしている人たちがインフルエンザに罹患(りかん)しないためには、インフルエンザが流行している時期での外部からの来訪者の厳しい制限がまず考えられます。ウイルスを施設内に持ち込ませないための重要な対策です。すでに多くの施設で実施されています。
次に、その施設で働いている職員自身のインフルエンザ予防の徹底化が重要と考えられます。職員のインフルエンザワクチン接種を外すことはできません。インフルエンザワクチン接種することにより、インフルエンザウイルス感染および発病を完全に防止することはできませんが、発病しても罹患した職員からのウイルス排出数を大幅に減らすことができます。ワクチン接種により重症化を防ぐことが期待できるでしょう。
職員が施設から外出する場合には、マスク着用が勧められます。マスクを着用してもインフルエンザウイルス感染を防止できないためマスク着用の効果はない、と一般的に言われていますが、筆者はマスク着用により鼻腔及び口腔粘膜の乾燥を防ぐことができ、そのことにより、ウイルスの侵入門戸であるこれら粘膜でのウイルス感染を抑制することが期待できると考えています。
職員が外出から施設に戻った時に、施設の入り口で着用していたコートなどの衣服表面の消毒が必要です。着脱する前に衣服表面に消毒液を十分に撒布する必要があります。この場合、アルコール性の消毒薬や塩素系の消毒薬の使用は推奨できません。確かにアルコールは70%濃度では高い消毒効果を発揮しましますが、それ以下の濃度に下がれば消毒効果は大幅に減じます。アルコールの高い揮発性を考えると、時間を経過した備え付けアルコール消毒薬の消毒効果には疑問が持たれます。アルコール性消毒薬の使用できる期間は限定されます。一方、塩素系消毒薬は衣服に損傷を与える危険があります。ノンアルコール性の安全度の高い消毒薬の使用がベストであると筆者は考えています。
外出から戻った直後には、石けんを用いる、顔面(可能であれば)、手指の洗浄、うがい薬を用いたうがいも怠ることはできません。
また、施設内でインフルエンザ様症状を示す患者の発生が認められたとき、急いで医療機関で受診します。医療機関では、インフルエンザ簡易診断キットによるインフルエンザ診断がなされます。その場合、たとえインフルエンザに罹患していても、インフルエンザ陰性と結果が出されることがあります。インフルエンザ様の症状が出てから時間が経過していない場合には、咽頭部などの粘膜で十分にインフルエンザウイルスが増殖していないため、抗原量が不足して簡易キットで反応しないのです。
このような場合、インフルエンザ陰性という診断が下されるために、この患者は施設内で隔離されない場合が多いと思われます。そのため、その施設でインフルエンザがまん延する結果になってしまうことがあります。
従って、たとえインフルエンザ診断用の簡易キットで陰性と出ても、大事をとってそのインフルエンザ様患者をインフルエンザ患者とみなして隔離をし、数日間経過を見る必要があります。その上で、もう一度医療機関を受診して、再度インフルエンザ診断を受けることが望ましいでしょう。
(了)
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