第79回:事業継続マネジメントに関するROIはどのように測るのか?
ClearView, Assurance / 2019 Business Continuity Benchmark Study
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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ISO 22301が中心
BCM用ソフトウェアやコンサルティングを提供しているClearView社(注1)と Assurance社とが共同で、2019年10月に「2019 Business Continuity Benchmark Study」という調査報告書を発表した。これはアンケート調査に基づく、BCMに関する実態調査であり、このような調査そのものは既に様々な組織によって行われているので、読者の皆様も特に目新しさは感じないかもしれない。しかしながら本報告書がユニークなのは、アンケート調査の実施にあたってBCM に関する3つの非営利団体(BCI、DRII、ACP)(注2)の協力を得て行われているという点である。
本報告書のためのアンケート調査は2018年の5~7月にかけて行われており、世界各国のBCM実務者、専門家、および企業経営者など1123人から回答を得ている。本連載で度々紹介しているBCIによる調査では、回答者の半分程度を欧州からの回答が占めることが多いが、本調査においては欧州と北米からの回答がともに39% で並んでおり、これにアジアの34%、中東の20%が続いている。このように回答者の地域が分散し、回答数が多くなってるのは、3団体の協力を得られた効果であろう。
本報告書の序盤には「BCMの重要性がどのように認識されているか」とか「経営層のサポートが重要」などといった、ありきたりな内容が列挙されているが、これらを流して読み進めていくと興味深いデータがいくつか見つかったので、ピックアップして以下に紹介する。
本稿のトップに掲載した図は、自組織のBCMの活動が何らかの規格に沿って行われているかどうかを尋ねた結果である(注3)。BCMの国際規格であるISO 22301については、回答者の46%が「現在使用している」、11%が「導入中」であり、「計画中」や「検討している」まで含めると実に80%がISO 22301の利用に関心を持っているといえる。
これに対して米国防火協会の規格であるNFPA 1600(注4)については、「現在使用している」と回答しているのは13%であり、「検討している」まで含めても 29%にとどまっている。ISO 22301に比べるとかなり少ないが、一方で本調査における米国からの回答者は25%であるから、米国企業の中では普及が進んでいると見ることもできよう。
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