2016/08/01
事例から学ぶ
「リスク対策.com」VOL.56 2016年7月掲載記事
富士フイルム100%出資の生産子会社である富士フイルム九州は、熊本市街地から10㎞ほど北東の熊本県菊陽町に位置する。フラットパネルディスプレイ材料事業の新たな生産拠点として2005年4月1日に設立された。
同社が製造するのがTACフィルムと呼ばれる、液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜(商品名はフジタック)。光学的に歪みが無く、透明性に優れ、薄く均一で耐久性があるなど優れた特性を持っており、あらゆる液晶表示に使われる偏光板を保護する。富士フイルムグループ全体で、TACフィルムは世界7割のシェアを誇り、富士フイルム九州はその6割を担う。単純に計算して世界市場の4割がこの工場で作られていることになる。仮に長期に工場が停止すれば、液晶を扱う世界中の製品の製造に影響をもたらす。
工場は大きく4棟で構成され、それぞれ生産ラインが2本ずつ整備され計8ラインとなっている。地盤調査に基づき、地震災害に強い耐震設計で建設された。当初から布田川・日奈久断層の存在も把握し、想定震度も算出していたという。さらに2011年の東日本大震災以降は、富士フイルムグループ全体でBCPの構築を進め、年2回のグループ全体の緊急情報共有訓練を行い、富士フイルム九州では、防災訓練、消火訓練なども繰り返し行っていた。また、安否確認訓練は3カ月に1回の頻度で実施していたという。
同社代表取締役社長の鈴木直明氏によると、「東日本大震災以降は、災害への意識が高まり、近年では、夜間の地震を想定した災害対策本部メンバーの参集訓練なども行っていた」とする。今回の熊本地震では、その成果が見事に発揮された。
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