2016/07/12
噴火リスクにどうそなえる?
■火山噴火の災害リスク評価
ただし、火山噴火のリスク評価は言うほど簡単ではない。
噴火活動の発生確率は、地震のような100年単位ではなく、1万年単位で考えなくてはいけない。
災害を引き起こす加害要因も溶岩や火砕流、噴石、降灰など多岐にわたる。脆弱性や損失価値についていえば、特に日本は火山地域の周辺に観光施設や宿泊施設、別荘、商業施設、交通網などがあり、さらに降灰による影響は近代化した都市構造では想定しきれないなど、様々な不確定要素が多い(リスク評価で考慮される要因)。中村教授は「中長期的、かつ広い視野による要因ごとの人的、物的損失の危険度リスク評価を火山地域で進めていくことが重要」と語る。
中村教授によれば、噴火活動と噴出物の量については、火山ごとに、ある程度の相関関係は導き出せるという。地震のように一定の間隔で発生するわけではないが、火山ごとに蓄えられるマグマの量には限界があると考えられており、一度、蓄積されていたマグマをすべて噴き出すような大噴火が起きれば、しばらくは同じような大規模な噴火はなく、逆に小規模な噴火なら、連続して起きるケースもあるとする。
その関係を過去1万年ぐらいまで遡って図表にしたのが階段ダイヤグラムだ(下図)。仮にすべての火山について、この図表が作成できれば、現在、噴火の危険性の高い火山について、優先的に対策を行うことが可能になる。
また、脆弱性については、人口、社会基盤、経済活動、諸施設などの分布状況など、基礎情報をあらかじめ収集し、地理情報システム(GIS)を活用して収録しておくと、評価作業が効率的になるとする。
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