2016/07/18
噴火リスクにどうそなえる?
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編集部注:「リスク対策.com」本誌2013年1月25日号(Vol.35)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年7月19日)
■近代都市を襲う降灰リスク
都市部における降灰被害は推定が難しい。火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長によると、世界的にも、近代都市において、火山の降灰による被害を大きく受けた場所は無く、富士山をはじめ多くの火山の降灰リスクを抱える東京は極めて稀な都市と言える。
国内では、鹿児島市が降灰を毎年経験しているが、1回の噴火で数㎜以下の積灰がある位の規模に過ぎない。1980年には、米国ワシントン州のセントへレンズが大規模な噴火を起こし広域にわたって大量の灰を降らせたが、ほとんどが人口が希薄な地域であったために、大きな被害にはならなかった。それでも、セントへレンズの火山調査にあたった筑波大学の鈴木勉教授によると、初期段階では、降灰の量にかかわらず特に交通、商業活動、地域サービスへの影響は顕著で、降灰量が7.5㎝を記録したリッツビルでは、わずか人口2000人程度の町であるのにもかかわらず、完全復旧には10日を要している。
現在、政府の「広域的な火山防災対策に係る検討会」(委員長:藤井敏嗣東大名誉教授)こうした都市部の被害も含め、課題を洗い出しているが、具体的な対策までは、まとめられてはいない。
■東日本大震災で発生したがれきの14倍の灰
2001年に産業技術総合研究所が行った調査によると、仮に東京に1㎝の降灰があった場合、東京都の降灰量は1782万㎥となる。これは10トンダンプ205万台分に相当する。ちなみに諸島部を除く23区の降灰量は622万㎥で10トンダンプ71万台分。東京道路清掃協会が保有するロードスイーパー85台で道路清掃を行ったとして除去には4日間を要する計算だ。仮に富士山の宝永噴火(1707年)と同様に南関東一帯に大量降灰があった場合の除灰量は約1億5000万㎥で、東日本大震災で発生したがれき総量の約14倍程度と想定される。
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