データは、神奈川県が通常の防災対策として民間企業に委嘱して作成したものである。震源などが異なる9つの地震に関するデータであり、毎日新聞は組織委も発生確率が高いとして影響を想定する「大正型関東地震」(マグニチュード8.2)に関する文書を県から入手した。

内閣府の採用する津波被害は(1)水深(浸水深)30センチから避難が困難になって死者が出始め(2)1メートルで死亡率100%、とする。入手したデータもこの基準を採用しており、湘南港を10メートル四方に区分けし、地形や標高などを勘案して、各エリアが地震発生から何秒後に(1)や(2)になるかが記載されている。

データによると、気象庁が地震の震度を発表する目安とされる約90秒後、選手やスタッフが所在するエリアが(1)になり、地点によっては(2)になる。約6分後に観客が立ち入る可能性のある防潮堤付近も(1)になり、約8分経過すると大半が(2)になる
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五輪出場経験もあるセーリングの元選手によると、出・退帆の際、選手とスタッフは集合エリアに所在する必要がある。津波避難など危機管理に詳しい愛知県立大学の清水宣明教授は「救命具を着けていても選手は漂流物でけがをする。着用していないスタッフは溺死する危険性がある」と指摘する。 

組織委は当初、港東側に観客席を設置し5000人を招く予定だったが、津波対策として観客数を3300人に削減した。選手・スタッフ2100人、報道関係者300人を合わせると計5700人が臨場する予定で、広報担当者は毎日新聞の取材に対して「全員が避難可能」と繰り返す。避難者は5つの一時避難施設と高台の計6カ所の避難場所に収容する計画だが、具体的な避難ルートなどは「お答えしない」とした。東京五輪のセーリング競技は7月26日~8月5日、男女10種目が実施される。

<参考>東京新聞(2019年2月1日付)はこの問題関連記事を「毎日新聞」より早く報じている。「東京新聞」の関連記事も一部載せておきたい。

「2020年東京五輪のセーリング会場となる神奈川県藤沢市の江の島ヨットハーバーを巡り、大地震による津波が発生した場合の安全確保などを理由に、大会組織委員会が観客数を当初計画の5000人から約3割減となる3300人に変更したことが(1月)31日、分かった。国際セーリング連盟も了承している。
江の島は津波発生時の避難先となる高台への道が狭いため、観客の誘導に課題があり、組織委が削減を検討していた。
セーリング会場は当初、東京都江東区の予定だったが、羽田空港に近く空撮用のヘリコプターが飛行を制限される空域に入ることが問題となり、変更された」。

謝辞:毎日新聞(2019年4月9日付朝刊)の記事に衝撃を受け引用させていただいた。あらためてお礼申し上げます。また東京新聞にもお礼申し上げます。

(つづく)