ハービーの教訓について語る河田氏

河田氏は、2017年のハリケーン・ハービーの被害と2018年の西日本豪雨による被害を比較した上で、「もしハリケーン・ハービーと同じ被害が東京で起きれば被害額は75兆2000億円、被災世帯は56万1000世帯に上ることが推定される。日本では地震だけが大きな被害を引き起こすと考えられているが大きな間違い。都心の大手町でも同じように危ないということが全く考えられていない」と指摘した。

一方で、ハービーのように防ぎようがない大災害が生じても、最重要なものだけは守り切るといった新たな防災の必要性を強調。その例として、「全米最大の医療機関であるテキサスメディカルセンターでは、2001年の暴風雨アリソンにより、地下施設などで甚大な被害を受けたが、それを機に500年に1度の確率の大雨でも被災しない施設を整備し、それが今回功を奏し、地下施設も水没しなかった」と語った。河田氏によると、テキサスでは、1900年に、海岸都市ガルベストンが高潮により壊滅的な被害を受けた歴史があり、それを機に、海岸防災にはかなり力を入れてきたが、今回の内地で大雨をもたらした被害に対してはコントロール不能に陥った。「コントロール不能な災害に対してはマネジメントをしなくてはいけない。そのためにも、どこがやられたらどうするのか、どこだけはしっかり守るべきなのかということをしっかり決めておく必要がある」とした。

同じく調査団長を務めた前 国土交通省国土技術政策総合研究所所長の藤田光一氏は、ハリケーン・ハービーの対応から学べる教訓として大きく7つの視点を挙げた。1つは、危機事態対応を担う公的機関の役割分担が明確であること。2つ目は、危機事象への耐性を強める方策が拡充していること。3つ目は危機事態に対応する者の拡大・対応が進化していること。4つ目が避難・回避行動が有効に機能していること。5つ目が、的確な行動を誘起させることに照準を定め、情報の生成や伝達、使用方法を向上させていること、6つ目が、危機事態対応のやり方に関する知恵・ノウハウが共有されていること。最後の7つ目が危機事象にさらされる場における構成員の能動的な取り組みを促す環境整備がされていることだ。藤田氏は「これらの教訓を生かすためには全体的なプロセスを常に意識し、総合的な視点で施策を推進していくとともに、一つ一つの施策の効果と限界までを見込んで連携の深化を考えていくことが重要と考えている」と語った。