「未曾有の経験はどうしても被害を大きくする」と語る林氏

報告会ではこの他、専門的な視点からの発表として、国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長で国際危機管理学会日本支部代表の林春男氏、京都大学経営管理大学院客員教授の関克己氏、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授の池内幸司氏、新潟大学危機管理本部危機管理室教授の田村圭子氏、国交省水管理国土保全局河川計画課河川計画調整室長の森本輝氏、国交省国土技術政策総合研究所河川研究部水害研究室長の板垣修氏、内閣府 政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)付風水害対策調整官の菅良一氏がそれぞれ演台に立った。

林氏は、「テキサスではハリケーンによる暴風と高潮対策に力を入れていたが、ハービーはほとんど風が吹かず、とにかく大量の雨をもたらす未曾有の経験となった。未曾有の経験はどうしても、被害を大きくするが、そういう未曽有の被害からいかに立ち直るか、今改めてレジリエンスを真剣に考える取り組みをしている」とし、現地の専門家の活動を紹介。ヒューストンから学ぶべき点として、「百年の計」を考慮した総合的に対応する姿勢、「対処療法」ではなく根本的な治療を目指すことを挙げた。

田村氏は、ハリケーン・ハービーの対応では、組織間の相互連携がうまくいったことを紹介。その理由として「アメリカでは災害対応がインシデント・コマンド・システム(ICS)と呼ばれる仕組みにより標準化されたことが大きい」とした。また、ヒューストンでは、複数の組織が共同で作業できるジョイント・フィールド・オフィスを整備し、その中で、各組織が地図や表を使って活動をしていたことを具体的に紹介した。

パネルディスカッションでは、新潟大学の田村氏と国交省河川計画課の松木氏がモデレーターとなり、登壇者や聴講者の日本の防災体制に対する本音を探った。

河田氏は「とてつもない大きな災害が起きようとしているように、日本はいつまでたっても中小規模の災害に備えるようなことをしている。アメリカはハービーほどの大災害が起きて大都市が被災してもそれほど死者が出ていないのに西日本豪雨では200人以上も死んでしまった。防災に関してはまだまだ後進国ということを認識しなくてはいけない」と切り出した。これに関連して、国内で何度も同じ被害が繰り返されていることについて数人の発表者から「根本的な原因が見直されていない」との意見が上がった。東京大学の池内氏は「個人的な立場ではあるが、日本は災害があると責任追及ばかりがされ、アフター・アクション・レポートが作成されていないことが問題だ」と強調した。

(了)