第64回:進化する緊急事態コミュニケーション
BCI / Emergency Communications Report 2019
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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BCMの専門家や実務者による非営利団体BCI(注1)は、緊急事態におけるコミュニケーションに関する実態調査を2014年以降毎年実施してその調査結果を公開しているが(注2)、つい先ごろ最新の調査結果が「Emergency Communications Report 2019」として発表されたので、本稿ではこちらを紹介したいと思う。なお、従来は毎年12月に発表されていたが今回は年をまたいで1月の発表となったため、「2018年版」が発表されずに2019年版となっている。
調査は主にBCI会員を対象として、Webサイトを用いたアンケートで行われている。回答総数650件のうち半数が欧州からの回答であり、次いで北米からが 15%、中南米からが10%、アジアからが9%などとなっている。
今回の報告書で最も注目されるのは、従来の調査と比べて調査項目が大幅に変更されたことである。2017年版まではこの調査は緊急連絡システム(注3)のプロバイダーであるEverbridge社と共同で行われていたが、今回からは調査のパートナーが緊急事態管理用ソフトウェアのプロバイダーであるF24社に変わっているので、恐らくその影響なのではないかと思われる。
新しく加わった調査項目のひとつが、緊急事態管理においてどのようなデバイスが用いられているかという調査である。まず本報告書の本文で最初に示されているデータは、緊急連絡システムや緊急事態管理用ソフトウェアを活用しているかどうかを尋ねた結果であるが、回答者の6割程度がこのようなシステムやソフトウェアを活用していると回答している。
さらに、これらを活用しているという回答者がどのようなデバイスを緊急事態管理に使っているかを尋ねた結果が、本稿の冒頭に掲載した図である。回答者の40 %がパソコン(ノートパソコンを含む)、37%がスマホ、19%がタブレットを使っていると回答している。近年では海外(特に欧米)においては緊急事態管理用ソフトウェアの普及が進んできているが、その半数程度がスマホやタブレットから利用されているようになってきているようである。
また、前回までの調査では「緊急事態コミュニケーション計画」(emergency communications plan)を持っているかどうかを調査した結果が掲載されていたが、今回はもはやそのような設問はなく(注4)、むしろ計画が実行された際の時間に注目している。
図1は緊急事態コミュニケーション計画が発動されるまでの平均的な所要時間を尋ねた結果である。実際には発生した事象にもよると思われるが、7割程度が30分以内と回答している。2017年版では30分以内という回答は半数程度であったから、かなり短縮されてきている状況が伺える。また何らかの事象が発生した後に、トップマネジメントに第一報を入れるまでの平均的な所要時間を尋ねた結果が図2であり、7割弱が1時間以内と回答している(この設問は2017年版には無かった)。
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