2018/12/28
事例から学ぶ
大手企業の本社が東京に一極集中するなか、東京と札幌に本社機能を分割した代替拠点体制をとるアクサ生命保険。9月6日の北海道胆振東部地震では、札幌本社が被災。大規模停電や交通寸断など都市インフラの混乱のなか、4営業日6日間で平時業務に100%復旧できた。同社のBCP、本社2拠点体制はどう機能したのか。同社・札幌本社長代行の柏木勝俊氏と危機管理・事業継続部アシスタントマネージャー(AM)の中川原尚人氏に当時の様子を聞いた。
まさかの被災
9月6日午前3時7分、北海道南部を中心とする地震。震源地に近い厚真町では震度7を記録。約60km離れた札幌市内でも、震度6強か5弱と大きく揺れた。続いて18分後の3時25分に起きた停電は、北海道全域295万戸に及ぶ、日本で初めての大規模停電となった。
危機管理・事業継続部AMの中川原尚人氏は、東京から単身赴任している一人暮らしの札幌市内のマンションで大きな揺れに見舞われた。中川原氏は、真っ暗な部屋ですぐに支度を済ませ、10数階分のマンション階段を恐るおそる降り、オフィスまで約1.5kmの距離を歩いた。夜明け前の札幌の街。店看板や信号機までもが消え、時折通る自動車のヘッドライトが過ぎれば、手元すら見えない。手に持ったスマートフォンのわずかな明かりを頼りに、オフィスに到着したのは午前4時頃。いつもの2倍以上の時間が掛かった。「これまで東京本社が被災した時の支援ばかりを考えていたが、まさか自分たちが被災するとは…」と苦笑する。
札幌本社長代行の柏木勝俊氏も、東京からの単身赴任で中川原氏のすぐ近くのマンションで一人暮らしをしていた。「こんなに長い停電に遭ったのは初めて」という柏木氏。オール電化のマンションでは、震災後の停電によって室内の照明はもちろん、水道の水も出ず、調理器も使えない。暗闇の部屋を手探りでなんとか玄関ドアを開けたが、共用通路も真っ暗で非常階段にもたどり着けなかった。持っていたスマートフォンで足元を照らしながら、オフィスに向かった。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方