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トランプ大統領の関税政策が引き起こす混乱の中、2月18日には米国への自動車輸入に対して25%の関税が課される可能性が示された。具体的な国についての言及はなく、全世界を対象とした一律関税の導入が示唆されている。これが実際に導入されることになれば、日本は大きな影響を受けることになる。2022年に日本から米国へ輸出された品目のうち、自動車だけで全体の24%ほどを占めている。2024年には、トヨタの約53万台、マツダの約23万台、ホンダの約5400台を含む133万台あまりの自動車が米国へ輸出されたが、日本が世界へ輸出する自動車の3分の1が米国向けであり、関税率が現行の2.5%から10倍の25%に跳ね上がることになれば、日本の大手自動車メーカー、自動車部品加工会社などは大きな影響を受けることになろう。これを受け、武藤経済産業相が3月に米国を訪問し、ラトニック商務長官らトランプ政権閣僚と会談する方向で調整に入ったとされ、トランプ大統領が打ち出した自動車や鉄鋼、アルムニウムなどの関税措置を協議し、日本への適用除外を要請するとみられる。

では、それは上手くいくのだろうか。トランプ大統領は、米国を再び偉大な国家にする(MAGA)という目標を達するため、脅しとしての関税と発動する関税を巧みに操ることで、諸外国から最大限の譲歩や利益を引き出すと同時に、国際協調や外国の紛争における米国の負担を最大限抑え、米国の政治的安定と経済的繁栄を躊躇なく追求する。よって、トランプ大統領が自動車などの関税を引き上げる背景には、米国内での生産を促進し、外国企業の対米投資を促す狙いがある。彼は米国が長年開発援助や人道支援、国際秩序の維持に財政面から多大に貢献してきたにもかかわらず、経済発展を遂げた国々が安価な製品を大量に輸出し、米国の産業を衰退させてきたと感じている。特に、製造業の衰退を防ぐため、外国の製造品に対して高関税を設定し、外国企業が米国内での生産を強化し、それによって雇用を増やすことを狙っている。

こういった背景に照らせば、自動車関税などをめぐる動向において、そのボールは今日日本側にある。冒頭でも触れたように、トランプ大統領は自動車などに25%の関税を導入することを示唆しているが、これは諸外国に対する脅しの関税とも捉えられ、国家を特定しない一律関税の可能性を示すことで、事前に適用除外を要請してくる国家に対して、トランプ流のディールを行う狙いがあると考えられる。