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気象予報の観点から見た防災のポイント
幻の第4宮古島台風――9月の気象災害――
気象庁は、顕著な自然災害が発生した場合に、その原因となった現象に固有の名前を決めることがある。これまでに命名された気象現象は全部で32にのぼるが、現象名に島の名前が使われたものが4つある。そのうち、3つは宮古島(沖縄県)であり、残る1つは沖永良部島(鹿児島県)である。これらは、いずれも台風の名称になっている。
2023/09/18
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気象予報の観点から見た防災のポイント
高潮と満潮時刻――8月の気象災害――
高潮害は、台風がもたらす代表的な災害態様の1つである。台風により高潮のおそれがあるとき、気象解説ではほぼ例外なく、満潮時刻を示して警戒を呼びかけることが行われる。これはどの程度意味があるのだろうか。本稿ではその功罪を考えてみたい。
2023/08/22
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気象予報の観点から見た防災のポイント
長崎豪雨――7月の気象災害――
気象庁が発表する警報などの防災気象情報は、常に改善が図られ、情報の種類や発表のしかたは年々変化している。それは、災害を経験することによって、改善すべき点が明らかになり、技術向上の努力と相まって、防災気象情報をより効果的なものへと進化させる不断の取り組みがなされているからである。そのような防災気象情報の改善の歴史を振り返って見るとき、ターニングポイントとなったいくつかの災害事例を挙げることができる。そのひとつが、今回とりあげる通称「長崎豪雨」である。
2023/07/20
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気象予報の観点から見た防災のポイント
暴風警報と児童生徒の登下校――6月の気象災害――
2004(平成16)年は台風の当たり年だった。上陸台風は10個を数えた。言うまでもなく、気象庁の72年間(1951~2022)の台風統計における上陸台風最多年となっている。しかも、第2位は6個(2016年、1993年、1990年の3回)だから、2004年はダントツの第1位だ。この記録は、当分破られないのではないか。
2023/06/20
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気象予報の観点から見た防災のポイント
5月の上陸台風――5月の気象災害――
1965(昭和40)年5月20日15時にカロリン諸島で発生した熱帯低気圧は、西北西に進みながら発達し、22日21時にはフィリピンの東海上で台風第6号となった。この台風は、23日から24日にかけてルソン島に最も近づいた後、25日には針路を北東に変え、26日朝には沖縄の南海上に達し、中心気圧980ヘクトパスカル、最大風速30メートル/秒の勢力を示し、時速30キロメートルで北東へ進んでいた。その時点では、台風は28日頃に伊豆諸島付近を通過して、日本の東へ進むと見られていた。
2023/05/24
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気象予報の観点から見た防災のポイント
やまじ風――4月の気象災害――
岡山から松山行きの列車に乗って瀬戸大橋を渡り、香川県を経て愛媛県に入ると、間もなく進行方向左側の車窓に、屏風のようにそそり立つ急斜面が迫ってくる。四国山地のいちばん北側に位置する法皇(ほうおう)山脈の北斜面である。それは中央構造線の断層崖(だんそうがい)であり、標高差は約1000メートル、平均勾配はおよそ3/10にもなる。目に映る印象としては断崖絶壁のように感じられる。
2023/04/18
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気象予報の観点から見た防災のポイント
函館大火――3月の気象災害――
今回の話は89年前にさかのぼる。1934(昭和9)年3月21日18時53分頃、函館市南部の住吉町の一角から出火した火災は、折からの暴風にあおられて見る見る拡大した。消火活動は難航し、人々は逃げ場を失い、2166人が命を落とし、9485人が負傷した。焼失面積は416.39ヘクタール、焼失した建物は1万1105棟にのぼり、当時の函館市域の3分の1を焼失してしまった。この大火による被災者は10万人を超え、我が国の火災史上まれに見る大惨事となった。今回は、この大火を引き起こした暴風について考察する。
2023/03/20
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気象予報の観点から見た防災のポイント
冬の高潮――2月の気象災害――
高潮(たかしお)と言えば、台風によって引き起こされるものを連想する人が多いだろう。高潮害は、台風がもたらす代表的な災害態様の1つである。それについては本連載でいずれ解説するとして、今回とりあげるのは、冬季、発達した温帯低気圧によって引き起こされる高潮である。高潮は、温帯低気圧によっても起こる。
2023/02/20
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1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
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気象予報の観点から見た防災のポイント
豪雪をもたらす寒波――1月の気象災害――
2005(平成17)年12月は極東域に強い寒気が南下し、日本列島は相次ぐ寒波に見舞われた。東日本と西日本では、12月の月平均気温が戦後最も低くなった。また、日本海側では記録的な大雪となった。その傾向は2006(平成18)年1月以降も続き、日本海側の山間部では大雪となる日がたびたび現れた。新潟県津南町で2月5日に最深積雪416センチメートルを記録するなど、多くの地点で積雪深の最大記録を更新した。このため、除雪や屋根の雪下ろし等の作業中の落雪や転落などの事故による死傷者が多数発生するなどの人的被害があったほか、家屋の損傷、交通障害、停電などの被害が多発した。気象庁は、2006年3月1日、前年12月からの一連の大雪を「平成18年豪雪」と命名すると発表した。今回は、この豪雪をもたらした寒波について解説する。
2023/01/15
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気象予報の観点から見た防災のポイント
JPCZ――12月の気象災害――
「JPCZ」。何やら難しそうなアルファベット4文字略語だが、今冬はテレビのニュースにも頻繁に登場している。Jは日本海(Japan sea)、Pは寒帯気団(Polar air mass)、Cは収束(Convergence)、Zは帯状の領域(Zone)である。正式名称を「日本海寒帯気団収束帯」という。これは英名を和訳したものではない。1988年に和名と英名が同時に提唱された。提唱者は、当時東大海洋研究所教授の浅井冨雄である。生粋の専門用語がどれだけ一般の人に受け入れられるのか、興味深い。
2022/12/19
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気象予報の観点から見た防災のポイント
初冬の雪崩事故――11月の気象災害――
11月と言えば、秋と冬の接点である。雪崩はまだ少ないと思われるかもしれない。しかし、北海道の山や富士山など、緯度の高い地域や標高の高い山は、雪崩のシーズンに入っていることに注意しなければならない。
2022/11/19
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気象予報の観点から見た防災のポイント
2004年10月に上陸した2つの台風――10月の気象災害――
わが国で気象災害と言えば、まず台風を思い浮かべる人が多いのではないか。わが国で災害をもたらす気象現象の筆頭格が台風であることは、疑いもない。
2022/10/14
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気象予報の観点から見た防災のポイント
紀伊半島大水害――9月の気象災害――
東日本大震災のあった2011(平成23)年の9月上旬には、台風第12号の影響により、西日本から北日本にかけての各地で大雨となり、特に紀伊半島では、総降水量が広い範囲で1000ミリメートルを超えた。この豪雨による和歌山・奈良・三重県での災害は、一般に「紀伊半島大水害」と呼ばれている。本稿では、この災害をもたらした気象状況の特徴について述べる。
2022/09/16
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気象予報の観点から見た防災のポイント
玄倉川水難事故――8月の気象災害――
1999(平成11)年8月13日、神奈川県西部の丹沢山地には、お盆休みとあって、キャンプを楽しもうとする人たちが訪れていた。折から熱帯低気圧の影響で雨が降り始めたにもかかわらず、酒匂(さかわ)川水系の玄倉(くろくら)川では、河原や中州にテントが張られ、バーベキューを楽しむ人たちの姿が見られた。ダム管理者と警察は、翌14日の朝にかけて、人々に何度も退避を促したが、川が増水するのを見てもかたくなに勧告を拒み続ける人たちがあり、彼らはとうとう避難のタイミングを失って濁流にのまれ、13人が命を落とす結果となった。
2022/08/01
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気象予報の観点から見た防災のポイント
日本海側の豪雨――7月の気象災害――
2004(平成16)年の7月には、本州の日本海側で豪雨が相次いだ。まず、7月12日から13日にかけて、新潟県中越地方を中心に、福島県会津地方も含めて、日降水量300~400ミリメートルの記録的な大雨となり、いくつもの河川で堤防が決壊した。この大雨による被害は、死者16名、負傷者83名、住家損壊5810棟、住家浸水8177棟などに及んだ。「平成16年7月新潟・福島豪雨」である。
2022/06/30
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気象予報の観点から見た防災のポイント
都市型水害―6月の気象災害―
1999年6月29日、福岡市は集中豪雨に見舞われた。降水強度が下水道等の排水能力を上回り、行き場を失った大量の雨水が博多駅付近の市街地を覆った。この災害では、都市の地下空間が水害に関していかに脆弱であるかに注目が集まり、以後、「都市型水害」という言葉が盛んに用いられるようになった。本稿では、都市型水害を気象予報の観点から考察する。
2022/06/01
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気象予報の観点から見た防災のポイント
初夏の突風―5月の気象災害―
本連載「気象予報の観点から見た防災のポイント」は、2019年11月に「初冬の突風」でスタートした。第31回目となる今回は、初回とは季節が正反対の「初夏の突風」をとりあげる。
2022/05/05
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気象予報の観点から見た防災のポイント
林野火災―4月の気象災害―
1983(昭和58)年4月27日12時05分頃、岩手県久慈市長内町の山林から出火した林野火災は、折からの強い西南西の風にあおられ、飛び火をしながら急速に延焼拡大し、16時40分頃には出火地点から約3キロメートル東の海岸線に達して集落に延焼した。火災はなおも海岸線に平行に、東南東方向へ延伸を続け、20時頃には出火地点から約6.2キロメートルにまで到達。その後はゆっくりと南側の山林へ燃え広がった。消防隊は不眠不休で消火活動にあたり、翌日には陸上自衛隊も投入されたが、なかなか鎮火に至らなかった。
2022/04/01
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電源・配線不要の高感度カメラ
沖電気工業(OKI)は、「ゼロエナジーゲートウェイ」シリーズから、外部電源が不要で、夜間など暗い低照度環境でも鮮明に撮影できる「ゼロエナジー高感度カメラ」を販売する。同社が独自開発した低消費電力の高感度カメラモジュールにより、老朽化したインフラや災害の現場を昼夜問わず撮影し、その画像を遠隔地から確認できるもの。インフラ事業者や官庁・自治体による活用を提案する。
2022/03/22
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気象予報の観点から見た防災のポイント
人命を奪う暴風雪―3月の気象災害―
2013(平成25)年3月2日朝、北海道オホーツク海側の湧別(ゆうべつ)町は、前夜からの弱い雪が止み、穏やかに晴れていた。この日は土曜日とあって、外出する人も多かった。だが、この穏やかさをかき消すかのように、昼過ぎから暴風雪が襲ってきた。それは、猛吹雪に慣れているこの地方の人々でさえ難儀するほどの激しさであった。
2022/03/01
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気象予報の観点から見た防災のポイント
200万都市を脅かす降雪バンド―2月の気象災害―
筆者の住む北海道札幌市は、約200万(2022年1月1日現在の住民基本台帳では196万668人)の人口を擁し、人口規模から言えば、東京、横浜、大阪、名古屋に次いで、わが国第5の都市である。一方、気象庁の気候統計によれば、札幌市では年間479センチメートルの雪が降る(1991~2020年の観測データに基づく平年値)。これは、都道府県庁所在都市の中では、青森市(567センチメートル)に次いで第2位であるが、人口50万人以上の都市に限れば、ダントツの第1位である。気象条件から見た札幌市の特徴は、何と言っても冬期間の降雪の多さにある。
2022/02/01
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気象予報の観点から見た防災のポイント
三八豪雪―1月の気象災害―
1963(昭和38)年1月23日、新潟駅を夕刻に出発した急行「越路」(こしじ)は、順調に走れば、同夜のうちに東京・上野駅に到着するはずであった。しかし、大雪と吹雪のため新潟県内で数回にわたり立ち往生。満身創痍の列車が上野駅に到着したのは、5日後の28日朝であった。急行「越路」だけでなく、新潟県内の信越本線は、1月24日から28日まで全面不通となった。これを含め、1963年1月の一連の豪雪で運休した列車は、当時の国鉄の旅客と貨物合わせて約1万9500本、立ち往生7400両、減収約30億円に達した。これによる社会経済への影響・損失は計り知れない。
2022/01/04
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気象予報の観点から見た防災のポイント
余部橋梁列車転落事故―12月の気象災害―
1986(昭和61)年12月28日、山陰本線の鎧(よろい)~餘部(あまるべ)間で、列車が暴風にあおられて鉄橋から転落する事故が発生した。余部橋梁列車転落事故である。回送列車のため乗客はいなかったが、鉄橋の下にあった工場の従業員や列車の乗務員など6名が死亡、6名が重傷を負った。この事故の引き金となった暴風は、日本海に発生した小さな低気圧によるものであった。
2021/12/01
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気象予報の観点から見た防災のポイント
おくて台風―11月の気象災害―
1990(平成2)年11月30日、台風第28号が和歌山県に上陸した。上陸後、間もなく温帯低気圧に変わったが、影響は28都道府県の広範囲に及び、死者・行方不明者4名、家屋の全半壊162棟などの被害をもたらした。この台風は、気象庁の統計がある1951(昭和26)年以降の台風の中では、上陸日時の最晩記録となっている。台風シーズンをはるかに過ぎたこの時期に上陸する台風の特徴を調べてみる。
2021/11/01