リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
(本調査は、兵庫県立大学教授の木村玲欧氏と関東学院大学准教授の大友章司氏の協力を得て実施しています)

※本記事は、危機管理白書2022に掲載したものです。

 

避難指示一本化の理解は約5割
行政の防災に関するホームページは見られていない

2021年5月20日付で災害対策基本法の一部を改正する法律が施行され、「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が「避難指示」に一本化された。アンケートでは、このことをどの程度理解しているかについて質問。「よく理解している」「ある程度理解している」「あまり理解していない」「聞いたことがない」の中から、当てはまる回答を選んでもらった。結果は、「よく理解している」が6.3%、「ある程度理解している」が44.2%で、理解しているとの回答は約 5割にとどまった【グラフ1】。内閣府が2019年10月の東日本台風後に行ったアンケート調査では、回答した約3000人のうち、当時の避難「勧告」と避難「指示」の、双方の意味を正しく理解していた人は17.7%と低く、このことが災対法改正の動きへとつながったが、今回の回答を見る限り、まだまだ国民に浸透している状況とは言い難い。

アンケートではまた、住民がどの程度、政府や自治体、民間企業の防災に関するホームページを見ているかも尋ねた。それぞれのホームページについて、「よく見ている」「見ている」「あまり見ていない」「全く見ていない」の4つの選択肢から最も当てはまるもの1つを選んでもらったところ、「よく見ている」「見ている」を足した割合が一番高かったのは、民間企業(Yahoo!、ウェザーニューズ、日本気象協会など)で49.2%、次いで自分の住んでいる市区町村(22.5%)、自分の住んでいる都道府県(16%)の順となった。気象庁では2021年、大雨による災害発生の危険度の高まりをインターネットの地図上で確認できる「危険度分布」のサイトを立ち上げ、愛称を「キキクル」に決定したが、キキクルを見ている人は、わずか10%だった【グラフ 2】。

避難勧告と避難指示が一本化されたことの理解と、こうした政府や自治体の防災ホームページの活用の相関についても分析を行ってみた。その結果、いずれのホームページも、「見ている」頻度が高いほど、避難指示に一本化されたことを理解している傾向が浮かび上がった。防災に関するホームページを見る頻度だけが、避難情報の理解と密接にかかわっているわけではないが、少なからず、両者には関連性が見られた【グラフ3】。