2025/02/09
定例セミナーダイジェスト
能登半島地震はBCPをどう変えたか
市立輪島病院の経験
危機管理塾 1月17日
市立輪島病院事務部長
河﨑国幸氏

病院BCPはリソース制約のシビアな想定が必要
危機管理塾は1月17日、東京・千代田区の新駿河台ビル会議室で開催。1年前の能登半島地震で大きな被害を受けた市立輪島病院の事務部長・河﨑国幸氏が当時の状況を振り返り、現場で起きたことや求められたこと、BCPで機能したことやしなかったことについて発表した。
河﨑氏は「2007年の地震とは比べ物にならない被害だった」と回想。電気や水道などのライフラインが途絶、院内配管からの漏水で診察・検査機器が全滅したと説明し「入院患者や職員に一人もケガ人が出なかったのがせめてもの救い。だが、その時点で災害拠点病院の役割を果たせる状況になかった」と話した。
周辺環境においても、道路が寸断されて孤立地域が多発。職員が参集できないなかで人的リソースも限られたと発言。そうした最悪の状況下で少数の医師と看護師が自らの判断でトリアージを開始したと述べ「想定を超える被害でBCPの大半は機能しなかったが、現場の意思決定と行動においては日頃の訓練が非常に役立った」とした。
河﨑氏は発災後の急性期対応において、少ない可能性を見つけ出しできることを実施したと解説。医療リソースを制限されながらも結果的に運営を止めることなく継続できたのは「DMATの支援を受けて入院患者や透析患者を他院にすべて搬送できたことが大きい。それがなければパンクしていた」と振り返った。

河﨑氏は医療のBCPについて「病院の事業は復旧が命。そのためには人とともに設備・機器とライフライン、特に水は不可欠になる。それらの制約をシビアに想定してBCPをつくり、備えておく必要がある」と指摘。見直しに必要な観点として「本部長不在時の院内災害対策本部立ち上げ基準・手順」「発災曜日・規模・災害拠点病院としての役割をふまえた診療継続体制」「下水5日以内復旧対策や医療機器・設備の確保対策」など、7つのポイントをあげた。
●次回危機管理塾
2月17日16:00~17:30 朝日ビル5F貸会議室
阪神・淡路大震災から30年 あのときを振りかえる
消火、救助活動の現実
お申し込みはこちら。
- keyword
- 防災
- BCP
- サイバーセキュリティ
- OTセキュリティ
- 能登半島地震
- 水害BCPタイムライン
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方