【ソウル時事】韓国・全羅南道の務安国際空港で29日に起きた旅客機事故に関し、韓国メディアは、鳥類がエンジンに衝突する「バードストライク」の影響で着陸時にブレーキの役割を果たす車輪(ランディングギア)が故障し、減速できなかったとの見方を伝えた。ただ、左右に1基ずつあるエンジンが同時に出力を喪失したのかなど、解明すべき謎は多い。
 事故機は空港に胴体着陸し、ほとんど速度を落とさず滑走路を進み壁に激突、炎上。飛行中の同機の右エンジンから煙が吹き出る瞬間を捉えた映像も報じられた。
 聯合ニュースによると、航空専門家は「鳥類がエンジンに入るとエンジンが壊れ、連結している油圧システムにも影響を与える場合がある」と解説。「ランディングギアを上げたり下げたりする油圧システムが故障した可能性がある」と指摘した。
 ただ、片方のエンジンが壊れても、残る1基が無事ならランディングギアを動かすことはできる。油圧システムもバックアップ用の補助装置を備えており、作動しなかった理由は不明だ。韓国航空大学のキム・インギュ飛行教育院長は聯合に「(機首と左右主翼下の)3カ所のランディングギアが全て出なかったのは非常に珍しい。鳥類衝突だけで起きたと考えるのは難しい」と分析した。
 旅客機にはまた、エンジンの逆噴射や、空気抵抗を起こす主翼上面の板(スポイラー)の使用など他の減速手段もあるが、いずれも機能しなかったもようだ。
 事故機が以前から機体に何らかの問題を抱えていた可能性を示唆する情報もある。27日に事故機を利用した乗客は韓国メディアに「(離陸時のエンジン)始動に数回失敗して不安になり、乗務員に話したが、特に問題ないという反応だった」と証言した。
 務安国際空港の滑走路は2800メートル。地方空港のため、ソウル近郊の仁川国際空港の3700メートル以上に比べ短い。国土交通省幹部は「以前から旅客機を運用しており、滑走路の長さが十分ではないため事故が起きたと見るのは難しい」と強調した。 
〔写真説明〕29日、韓国南西部・全羅南道の務安国際空港で炎上する旅客機の残骸(AFP時事)
〔写真説明〕29日、韓国南西部全羅南道の務安国際空港で、炎上した旅客機の尾翼部分周辺に集まる救急隊員(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)