2024年のリスクを10のキーワードで振り返る

#1 脆弱性の露呈
1 月 1 日に発生した能登半島地震は、山間部で半島という地理的にアクセスが制限された状況に加え、人口減少と高齢化が進む地域の社会的な特徴から、救助・復旧は困難を来した。多くの人が休暇をとっている祝日だったということも対応を難しくした。まさに社会の脆弱性が突かれた災害だったと言える。同様な災害は、全国どこでも起き得る。


#2 二重被災
2024 年 9 月 21 日、石川県奥能登地方に記録的な豪雨がもたらされた。災害により被災した地域が再び別の災害で被災 する二重被災が発生した。アメリカでは 9 月末から 10 月にかけ、フロリダ州に2つの大型ハリケーンが上陸し、過去最 大級の被害をもたらした。気候変動リスクが高まる中、二重被災のリスクは過去に比べても高くなっている。

#3 気候変動の脅威 
2023 年は、史上最も暑い年として、国連事務総長のアントニオ・グテレス氏が「地球沸騰」と発言したことが大きな話 題になったが、2024 年も前年をさらに上回るほどの猛暑が続いた。熱中症で搬送される患者は過去最大規模に達し、 気候変動が原因と見られる災害も多発した。

#4 軽視されていた制度
2024 年 8 月に初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」は、2019 年から制度が開始されていたに もかかわらず、多くの人が理解しておらず、さまざまな混乱を引き起こした。似た制度としては北海道・三陸沖後発地 震注意情報があるが、制度が十分に理解されておらず、再び大きな混乱をきたす可能性もある。「必ずしも大地震が起 きるわけではない」という情報の軽視が招いたリスクと言える。

#5 組織風土化した陋習
2024 年も相次いだのが不正や過失だ。トヨタ自動車や日立造船、JR 関連会社といった命にかかわる製品を扱う企業で の認証不正のほか、電力会社や保険業界では、関連会社や子会社の情報を不正に閲覧している問題が発覚した。また、3 月には、小林製薬が販売する紅麹サプリによる健康被害が発覚し、被害が国外まで広がる事態となった。被害を把握し てから公表までに約2カ月かかったことや、行政等への連絡が遅延したことが批判を招いた。

#6 優越的地位の乱用
自社の都合によって、調達先に過度な負担を押し付けたり、フリーランスに対して一方的な条件のもと仕事を強いる ことは許されることではない。人権問題と合わせ、企業の優越的地位の乱用に対する社会の目は厳しさを増している。 「これまで通り」と軽い気持ちで発注しても、受け手にとっては過度な要求に受けとめられることもある。2024 年は、 企業ブランドの失墜につながりかねないリスクが相次いだ。

#7 カスタマーハラスメント
2024 年のリスクで最も注目を集めた言葉の1つがカスタマーハラスメント(カスハラ)だ。顧客からの不当な行為や要 求、クレーム、言動によって、労働者の就業環境が害されることを指す。東京都が全国に先駆け自治体で初めて条例化 に踏み切ったほか、企業でも運輸、コンビニ各社がカスハラ対策の方針を打ち出した。政府はカスハラ対策を法制化す る検討に入った。

#8 委託先リスク
2024 年も猛威を振るったのがサイバー攻撃。KADOKAWA をはじめ大企業の被害が相次いで報じられた。また、今年の 傾向として顕著だったのが、委託先が攻撃を受けたことにより、複数の委託元が管理する情報が漏えいしたケースだ。 被害が広範囲に及んだのが全国の自治体や企業から印刷業務などを請け負っているイセトー(京都市)。同社を利用し ている自治体・企業では、情報漏洩が相次いで確認された。

#9 過剰依存
今年 7月、Windowsを搭載したパソコンが停止する世界規模のシステム障害が発生した。影響は、航空やスーパー、飲食店 など幅広い業界に広がった。シンガポールでは、通信最大手のシンガポール・テレコムの固定電話回線が 3 時間にわたり通 じなくなる大規模通信障害が発生し、社会的混乱を引き起こした。そして、日本でも、送電線の調整ミスにより四国で大規模 な停電が発生した。主要企業に過剰に依存していることで社会全体が被害を受けるケースが相次いでいる。

#10 未知の未知
2024 年は世界各国で選挙が行われる選挙イヤーとなった。その中でも、米国大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の 勝利は、世界に緊張を走らせた。日本企業にも多面的なリスクをもたらす可能性があると考えられる。関税政策の影響、 海外拠点の治安、台湾海峡の緊張など、未知の要因が複雑に絡み合う。他方で、中国の動向も不透明さが増す。

2025年に求められる対策は、危機管理白書2025に掲載
https://www.risktaisaku.com/articles/-/98156