防災庁設置でどう変わる?

こうした中、石破政権によって防災庁の設置に向けた動きが本格化し始めた。「防災庁」で、真っ先に思い浮かぶのがFEMA(米国連邦緊急事態管理庁)だ。国土安全保障省(DHS)の一部で、大災害に対応する米国政府の専門機関である。1960年代から1970年代にハリケーンや地震災害が相次いだことから、ジミー・カーター大統領時代の1979年に、独立した連邦機関として設置された。2003年には、ブッシュ政権による組織改編で国土安全保障省に編入された。その後、指揮系統の混乱などによる災害対応の遅れなどがしばしば指摘されているが、膨大な国土を守る上での不可欠な存在となっていることは間違いない。そのアメリカすら、2024年は過去最大規模のハリケーンが連続で上陸し、甚大な被害を受ける「まさか」の事態が発生した。

FEMAのロゴマークは鷲である。現在はDHSと同じマークに統合されているが、「鷲の翼が内側の円を突き抜けて外側の輪に飛び出しているのは、伝統的な官僚主義を打ち破り、政府の機能を異なる方法で遂行することを示唆している」(DHSホームページより)のだという。中央には海、山、空が描かれている。平和的な対応が求められる中、あらゆる場所で、あらゆる危機に対して備える姿勢を表している。日本の防災「鳥」はどんな姿が描かれるのだろう。自治体の災害対応力を補うためには新たなテクノロジーが不可欠だ。DXを駆使したアンドロイドの鷲はどうだろか。少なくとも、「まタカ」は、やめてほしい。来年は1995年に発生した阪神・淡路大震災から30年目の節目を迎える。日本の防災がどこまで進化したのかが問われる。

 

災害以外のリスク

災害以外のさまざまなリスクに目を向けてみよう。企業の不祥事は、「またか」の連続だった。「既知の既知」への対策すら十分とは言えない。いや、おそらく、知っていると思い込んでいることが陥穽(かんせい)なのかもしれない。自分たちの都合だけで物事を考え、判断する。これが陋習(ろうしゅう)化したリスクになっていることに気付いていない。消費者の目線から、自分たちが常識と思っていることを一度疑ってみるべきではないか。

気候変動と同じように年々脅威がますサイバー攻撃への対策も急務だ。2024年は委託先のウイルス感染から大量の情報漏洩が発生する事態が相次いだ。自社の対策だけでは不十分になっている。取引先や委託先、サプライチェーンに至るまで網羅的な対策をしていくことが求められる。

サイバー攻撃に限らず、取引先などに極度に依存するリスクへの対策も不可欠だ。7月に発生したマイクロソフトのシステム障害は世界を震撼させた。数社が市場を独占するIT・インフラ分野においては避けようがないリスクともいえるが、「まさか」では済まされまい。やはり、自社の事業を継続する上で不可欠なリソースについては、万が一の代替手段を持たなければ、一蓮托生を覚悟するしかない。

最後に、本当に先を読むことが難しいのが世界情勢だ。2024年は各国で選挙が行われた。特に注目されるのが来年発足する第二期トランプ政権の動き。中国との関係はどうなるのか、台湾危機への影響は?「未知の未知」のリスクに備えるには、今分かっていることを少しずつでも整理して既知に変えていくしかない。こちらは鵜の目鷹の目が求められる。