2024/12/23
防災・危機管理ニュース
中国で、主に高度1000メートルまでの低空域を利用したビジネス「低空経済」が注目を集めている。ドローンによるデリバリーサービスが始まっているほか、「空飛ぶクルマ」の量産化に向けた取り組みも加速している。
李強首相は3月の全国人民代表大会(国会)で公表した政府活動報告で、低空経済を「新たな成長エンジン」に位置付けた。報道によると、当局は低空経済の市場規模が2035年に3兆5000億元(約75兆円)に達すると見込む。
◇ドローンがお届け
ハイテク企業が集まり、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる広東省深セン市。箱を抱えて空高く飛んでいくのは、出前アプリ大手・美団の配送用ドローンだ。アプリで料理や日用品を注文すると、ドローンが近くの受け取りボックスまで届けてくれる仕組みだ。
同市竜華区にあるドローンの離着陸拠点を訪れると、飲食店で飲み物を受け取った美団のスタッフがやって来た。注文品を専用の箱に入れるなどして、ドローンにセット。箱が落下しないよう確認作業を終えると、ドローンはあっという間に飛び去った。
案内役の美団従業員は「鳥や風船などと遭遇した場合、自動的に回避するようになっている」と、安全性に胸を張る。ドローンは受け取りボックスの上部に付けられたQRコードのような「マークポイント」を認識して着陸。決められたルートを飛ぶため、人が操縦する必要はない。渋滞とも無縁だ。この拠点にはドローン十数機が配備され、周囲5キロ圏内をカバー。雨や雪の降る中や夜間でも飛行可能という。
美団は深セン市内に十数カ所の離着陸拠点と約40カ所の受け取りボックスを設置しているほか、北京市や上海市などでもサービスを展開。21年から今年9月までに約36万回の配送を行った。
◇26年の納入目指す
空飛ぶクルマの開発も進む。広東省広州市の新興電気自動車(EV)メーカー・小鵬汽車の傘下で、空飛ぶクルマを手掛ける広東匯天航空航天科技(小鵬匯天)は昨年、初の量産型モデル「陸地航母」を発表した。
陸地航母は2人乗りの飛行ユニットを地上走行用の車両から分離して飛ばす方式で、離陸地点まで飛行ユニットを一体として運べるのが特長。レジャーのほか、災害救助などの公共サービスでの活用も想定している。
量産に向け、今年10月に飛行ユニット工場の建設に着手。年産能力は1万台で、26年中の納入を目指す。価格は200万元(約4300万円)以内に抑える方針で、商用運航に必要な「型式証明」の取得を急いでいる。
小鵬匯天のブランド責任者、陳萍さんは「24年は『低空経済の商業化元年』だ」と説明。各省や市レベルで支援策が打ち出されているといい、「中国全土でこの新産業の発展を支えている」と強調した。
〔写真説明〕離着陸拠点から飛び立つ中国出前アプリ大手・美団のドローン=12月、広東省深セン市
〔写真説明〕受け取りボックスに注文品を届ける中国出前アプリ大手・美団のドローン=12月、広東省深セン市
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方