2024/12/11
防災・危機管理ニュース
【サンパウロ時事】アルゼンチンのミレイ大統領が就任して、10日で1年となった。インフレ退治に向け補助金削減など国民の「痛み」を伴う経済改革を断行し、一定の成果をもたらした。外交ではトランプ次期米大統領との連携を模索。トランプ氏が返り咲きを決めた米大統領選後、外国首脳として同氏と最初に対面で会い、蜜月ぶりをアピールしている。
「最も重い鎖から解放されつつある」。ミレイ氏は11月、月間のインフレ率が約3年ぶりの低水準になったと成果を誇示した。アルゼンチンは歴代の左派ポピュリスト政権が予算のばらまきを繰り返し、インフレが慢性化。4月には年間のインフレ率が300%近くにまで悪化した。
「小さな政府」を掲げるミレイ氏は、就任直後から財政面で大なたを振るった。公共料金への補助金を削減し、新規の公共工事も停止。議会では議席数の劣勢をはね返し、規制緩和や国営企業の民営化を盛り込む法案可決に成功した。財政が黒字に転じると、国外に逃避していたドルが流入。アルゼンチンは債務不履行を繰り返した過去があるが、格付け大手は11月、「救済を求めず返済する能力」が改善したと認め、格上げした。
一方、緊縮財政に伴う副作用も目立つ。国内総生産(GDP)は今年4~6月期まで3四半期連続で前期比マイナスを記録。賃金も伸びず、今年前半には国民の約53%が貧困状態に陥った。「ミレイ氏の実験は依然、大きな間違いを犯す可能性がある」(英誌エコノミスト)と厳しい見方も出ている。それでも「古い政治」との決別を訴えるミレイ氏への反発は限定的で、政権支持率は50%前後で安定している。
対外政策では親米路線を前面に打ち出し、中ロなどで構成する新興国グループ「BRICS」参加を見送り。温暖化問題を軽視するトランプ氏に歩調を合わせるかのように、11月の国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)では代表団に引き揚げを命じた。ただ、関税導入による保護主義を掲げるトランプ氏に対し、ミレイ氏は経済を市場競争に委ねるのが基本姿勢で、両者には対立の火種もくすぶっている。
〔写真説明〕アルゼンチンのミレイ大統領=6日、モンテビデオ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- アルゼンチン
防災・危機管理ニュースの他の記事
- 2025年のCMO展望リポートを発表=米NIQ〔BW〕
- 米GM、無人タクシー撤退=開発難航で、ホンダは提携解消
- 米、中国のIT企業制裁=重要インフラにサイバー攻撃
- AI生成フィッシングに対抗するAIDAを発表=米KnowBe4〔BW〕
- 「痛み」伴う改革で成果=トランプ氏と連携模索―ミレイ大統領就任から1年・アルゼンチン
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/10
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方