【ロンドン時事】欧州連合(EU)の執行機関に当たる欧州委員会は1日、フォンデアライエン委員長率いる2期目の新体制が始動する。1期目ではコロナ禍やウクライナ危機への対応で指導力を発揮したフォンデアライエン氏だが、国際協調に後ろ向きなトランプ氏の米大統領就任で、一段と難しいかじ取りを迫られる可能性がある。
 「われわれはウクライナを支え続ける」。フォンデアライエン氏は11月27日、新体制の承認投票を前に欧州議会で演説し、ロシアの侵攻が続くウクライナを支援する立場は揺るがないと強調。侵攻の長期化で加盟国の間に「支援疲れ」も見られる中、EUの結束を内外にアピールした。
 新体制の外交安全保障上級代表(外相)には、旧ソ連を構成したバルト3国の一つ、エストニアのカラス前首相が就任。ロシアに精通し、ウクライナ支援に積極的なカラス氏の起用は、フォンデアライエン氏が2期目でもウクライナ問題に最優先に取り組むことを示唆している。
 一方、議会演説では経済の課題にも多くの時間が割かれた。フォンデアライエン氏の要請でイタリアのドラギ前首相(欧州中央銀行=ECB=前総裁)がまとめた報告書の提言を基に、競争力の強化に向け、脱炭素化やデジタル化、人材育成などの重要性を指摘。米中二大国との格差を埋めるため、欧州経済の底上げが必要だと訴えた。
 EUのあらゆる課題のカギを握るのが米国との関係だ。ウクライナ支援や気候変動対策などで協調できたバイデン政権と異なり、「米国第一」を掲げるトランプ氏とは貿易や安全保障分野で利害が対立する公算が大きい。EU内でもトランプ氏との距離感に温度差がある中、新たにEU大統領に就任するポルトガルのコスタ前首相と連携しつつ、フォンデアライエン氏が米国から協力を引き出せるかどうかが2期目の成否を左右しそうだ。 
〔写真説明〕演説する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長=27日、フランス北東部ストラスブール(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)