この連載は、事故や災害など突発的な危機が発生した際にどう対応すべきかを、架空の地域サッカークラブが危機に直面したというストーリーを通して、危機対応のポイントを分かりやすく紹介していきます。
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紅葉山FCが利用している市営グラウンドが、近隣住民からの苦情によって使えなくなりましたが、「市営グラウンド利用者協議会」の発足により近隣の方々の理解が得られ、グラウンドでの練習を再開できるようになりました。またフットサルグループも協議会に参加することが決まり、新たな体制での運用が始まりました。
6月下旬の日曜日には予定通り、紅葉山FCと隣の市で活動しているチームとの試合が市営グラウンドで開催されました。結果は何とか紅葉山FCが辛勝してトーナメントを勝ち上がることができました。
試合そのものは13時キックオフでしたが、商店会から数件の飲食店が11時ごろからグラウンド内の空きスペースで屋台を出したので、普段にない賑わいを見せていました。
また、試合が終了した15時ごろから、初の試みとして「紅葉山地域防災の集い」が開催されました。市の防災担当者や消防署の協力による避難行動の体験会や、簡易的な救命救急活動訓練など、普段なかなか体験できないようなプログラムもあったので、防災の集いのために参加したという住民も多数見られました。
なお、このイベントの開催にあたっては、試合終了後の紅葉山FCメンバーの他、野球チームやフットサルグループからもスタッフが参加し、イベントの準備、運営、撤収を手伝いました。日頃から同じグラウンドを利用していながら交流のなかった彼らにとっては、共同作業を行う初めての機会となりました。
翌週の夕方には、関係者が市役所の会議室に集まって「紅葉山地域防災の集い」の反省会が行われました。
高宮(紅葉山FC監督):皆さん大変お疲れさまでした。協議会が新たに発足したばかりでこのようなイベントを開催することになって、皆さんも手探りで進めてこられたことが多かったと思います。朝倉さん、商店会の皆さんの方はいかがですか?
朝倉(商店会理事長):概ねどこの店も例年より売上が多くて喜んでいました。それから、今年は例年のような苦情が無かったことも良かったと思います。
高宮:苦情に関しては、以前に朝倉さんからお話をお伺いしたときに、ゴミのポイ捨てとか迷惑駐車とか、いろいろ聞いてましたからね。今回は野球チームとフットサルグループのスタッフがしっかり対応してくれたので、良かったと思います。
朝倉:フットサルの皆さんは当日とても真面目にやってくれましたし、ゴミの収集や分別のしかたは彼らが独自に工夫してくれましたから。
松嶋(野球チーム代表):それは良かったですね。
藤田(自治会長):防災に関する普及啓発は初めてでしたけど、これからも続けたいですね。自治会としても活動がマンネリ化してたんで、良かったと思います。もともとはトラブルがきっかけでしたが、新しいつながりができて、そのおかげで新しい活動ができました。今回ああいう形でイベントができたんで、自治会としてもこれから真面目に地域防災に取り組まないといけないと思ってます。
高宮:ところで藤田さん、近隣の方々の様子はいかがでしたか?私は試合の前後が何かと慌ただしくて、近隣の方々とお話しできなかったのですが。
藤田:概ね好評だったと思いますよ。お子さん連れて来られた方々も多かったですし。こないだ説明会に来られた方々ともお話しましたが、スポーツ団体の方々に対する印象もずいぶん変わったみたいですね。
高宮:それは良かったです。近隣の方々との関係がなんとか修復できたとしたら、これが再び壊れてしまわないように、こういう活動を地道に続けていきたいですね。
松嶋:そうですね。今回の一件で練習場所を使わせてもらえる有り難さを実感したところです。単に申し込めば使えるという意識じゃなくて、これからも気持ちよく使い続けていくために、協議会の運営をしっかり続けていきたいですね。
監督の高宮は、慌ただしかった3カ月間を自分自身の中でも振り返りながら、主体的に動いてくれたメンバーや関係者に感謝していました。今回は市に報告する都合上、このような反省会を行いましたが、紅葉山FCではこのような反省会を行ったことはありませんでした。今後は紅葉山FCでも何かの節目に活動を振り返る機会があってもいいのではないか?と高宮は思いました。
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