米大統領選で共和党のトランプ前大統領が返り咲きを果たし、同氏が掲げてきた主要政策の動向に日本企業が神経をとがらせている。自動車など製造業は、関税の大幅引き上げや再生可能エネルギー分野の補助金縮小を警戒。一方で法人減税や規制緩和など同氏の経済重視の姿勢について、事業環境の改善につながるとの見方があるほか、化石燃料「復権」への期待も聞かれた。
 ホンダの青山真二副社長は、恒久的な形で関税引き上げが実現すれば「対象にならない国での生産を考えざるを得ない」と海外生産拠点の再編を迫られる可能性に言及。マツダの毛籠勝弘社長は関税への対応は「個社ではできない。国と国との関わりの中で輪郭がはっきりする」と述べ、政府間交渉の行方を注視する姿勢を示した。
 住友電気工業の井上治社長は、東南アジアから米国へ輸出している機械制御部品に関し、「関税が上がるとその分はお客様に負担いただく形になる」と米国での価格競争力低下を懸念。ダイキン工業の竹中直文社長は、バイデン政権が導入した再エネ補助金の見直しなどによって「脱炭素の取り組みにブレーキがかからざるを得ない」と、米国での投資計画見直しを検討する考えを示した。
 一方、トランプ氏が打ち出している法人減税は米国に拠点を置く日本企業を含めて企業収益を押し上げる。富士フイルムホールディングスの後藤禎一社長は「経済はプラスの方向に活性化する」とする米現地法人の分析を紹介。電気自動車(EV)関連製品で出遅れた大手電機メーカー幹部からは、バイデン政権下での急速な普及について「この勢いで伸びていったらうちは取り残される。少し落ち着いてくれた方がいい」と本音をのぞかせた。
 三菱地所の梅田直樹常務は「不動産王」の異名も持つトランプ氏の経歴に触れ、「米国の不動産に追い風が吹いてほしい」と期待。米国で給湯器事業などを手掛けるリンナイの内藤弘康社長は「天然ガスなど従来のエネルギーを使っていくスタンスなので、悪い方向ではない」と脱炭素政策のアクセルが緩められることを歓迎した。 
〔写真説明〕6日のホンダのオンライン決算説明会見で話す青山真二副社長

(ニュース提供元:時事通信社)