2024/09/27
防災・危機管理ニュース
死者58人、行方不明者5人を出した2014年の御嶽山噴火から10年。今年3月に火山防災の普及啓発に当たる「御嶽山火山マイスター」に認定された長野県木曽青峰高校教諭の石沢淳さん(33)=同県木曽町=は「自然は大切だけど、時に牙をむくことを知ってほしい」と語る。
石沢さんは同県中野市出身で、噴火発生当時は北海道帯広市の大学に通う学生だった。地元に戻り、信州大の大学院で学ぶなどした後、21年に同校に赴任。専門の生物だけでなく地学も担当したことがきっかけで、御嶽山に関心を持った。マイスター制度の存在を知って受けた最初の審査は不合格だったが、グループ研究の課題で火山防災を取り上げた生徒を教える中で自らも知識を深め、再挑戦して合格した。
「具体例があると生徒の食い付きも違う」といい、授業では御嶽山で自身が撮影した植物の写真を見せたり、水蒸気爆発のメカニズムを教える際に御嶽山噴火の話をしたりする。「自然を正しく恐れてほしい」との思いから、身近で起きた出来事として生徒の記憶に残るよう意識している。
火山マイスター制度は県が17年度に導入し、これまでに28人が認定された。防災知識を伝えるだけでなく、木曽地域の魅力を発信するのも火山マイスターの重要な役割の一つだ。
石沢さんも赴任するまで木曽地域に来たことはなかった。そこで「今まで興味のなかった層に来てもらう工夫が必要」と考え、生徒にアピール方法をアンケートで尋ねたこともある。生徒と一緒に考えることで、「御嶽山を地域の観光の目玉として大事だと思ってほしい」という狙いだ。
この10年間、噴火に限らず豪雨や地震などさまざまな災害が各地で起きた。石沢さんは「ある災害で得られた教訓が他の災害で生かせることがある。火山マイスターとして御嶽山の教訓を伝えていきたい」と意気込んでいる。
〔写真説明〕「御嶽山火山マイスター」で長野県木曽青峰高校教諭の石沢淳さん=11日午後、同県木曽町
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- 御嶽山噴火
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方