内部公益通報対応体制は適切に機能しているか(イメージ:写真AC)

公益通報者保護法の制定と改正の経緯

公益通報者保護法は、平成16年(2004年)に制定され、同18年(2006年)に施行されました。そして、令和2年(2020年)に改正され、令和4年(2022年)6月1日から施行されているのが、現行の公益通報者保護法(以下「現行法」)です。

現行法の目玉のひとつが、事業者がとるべき措置などが定められている11条です。11条1項は、事業者に対し、公益通報の受付、当該公益通報に係る通報対象事実の調査及びその是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者(従事者)を定めるよう義務づけています。

その上で、同条2項では、「公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない」として、事業者に対し、内部公益通報対応体制の整備を義務づけています。なお、これらの義務に関し、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務であるとされています(同条3項)。

現行法の施行から2年以上が経過していますので、内部公益通報対応体制の整備を義務づけられた事業者では、同体制の運用実績が蓄積しつつあると思いますが、ご所属の組織において、内部公益通報対応体制は、適切に機能しているでしょうか。

行政機関の例になってしまいますが、地方自治体のひとつでは、知事に関する内部通報がなされたものの、その通報が本人や側近幹部に知られた上、知事らから通報者等に対し、不適切な対応がなされたのではないかということが大問題となり、連日、大々的に報道されています。

職位の下位の者は、内部通報において悩ましい立場に置かれる場合がある(イメージ:写真AC)

こういった例に照らしても、とりわけ、組織の長や幹部に関する内部通報があった場合の対応につき、組織のヒエラルキー上、それらの者の下部に位置づけられているであろう従事者としては悩ましい立場に置かれ、その悩ましさが、内部公益通報対応体制の機能不全として表面化してしまうことがあるのではないかと思われるところです。

そこで、今回は、組織の長や幹部に関する内部通報について、備えと心得をお伝えしたいと思います。なお、現行法につき、ガバナンス構築・コンプライアンス確保の手段としての内部公益通報制度という観点からの記事(改正公益通報者保護法の着眼点【前編】【後編】)がありますので、よろしければ、そちらもあわせてお読みください。