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自社だけでなく、サプライチェーンなどの事業に関連する幅広い範囲における人権上の欠陥を発見し、それを根絶・是正するための行動を明示化することが必要になってきている。多くの組織は、この必要性をESGの一環として捉えることが多いかもしれない。しかし、これを独立した、個別的なものとして取り組み、それを表明することは、組織が人権に対して真摯に組んでいることを示すだけでなく、実際に社会の要請に応じて、人権問題に取り組む態勢を強化することにもつながる。

ESGにおける欧米の規制

こうした動きが必要となることは規制強化が進んでいるという環境変化を反映している。直接的に人権だけに的を絞ったものではないが、アメリカでは関税法、ドット・フランク法、カリフォルニア州の透明性要請などが整備されてきているし、EUでも企業持続可能性報告指令(CSRD)が実施に移される。ヨーロッパの一部の国では、これに加えて独自の規制に動き出しているところもある。企業の説明責任を求める声はますます高まっていると考えるべきであるし、一定のルールに従って、その責任を果たしていることを表明しなければならない。後手後手に回るリスクは避けるべきで、むしろ早くから準備して動き出すことが賢明なリスクマネジメントの在り方でもある。

人権方針の設定

まずは、先進的な規制が求める原則やガイドラインを理解し、それに基づいて自社としての人権方針を検討するべきであるが、その際には、まずは堅実なものを策定することがポイントで、約束しすぎない、高すぎる成果を求めないことである。また、事業との関わりで人権を検討すべきであるため、自社の事業をベースにして、それに関連する人権課題を抽出することが出発点となる。策定した方針は実行に移されてこそ意味がある。そのため、自社内で共有するだけでなく、サプライチェーンなど関連する組織にも周知することも必要である。さらには、内部通報制度なども確保することを忘れてはならない。

外部に向けた報告では、方針を表明し、どのような目標を設定し、その実現に向けて何を行っているのかも示すことが求められる。また、場合によってはその実行に失敗することがあっても、それを明らかにして、再発防止に向けてどのような手を打っているのかも明記すべきである。