「マンションが多い港区では、住宅居室内の遮音性の向上や高層ビル群による音の反響により、室内では放送が聞き取りにくいという課題がありました。そこで遮音性の高い集合住宅の室内でも回り込んで届きやすい電波を利用して、区の災害情報を送信するラジオを導入しました。配布を始めると皆様の需要が高く、配布再開に向けて準備中です」(北野さん)。

他県でも発生している災害の情報が飛び交う中、災害時の情報をいかに入手するのか住民の方々の意識も高まっているようです。

在宅避難を主体的に続けるために、対策方法を発信!

写真を拡大 港区が作成する「港区マンション震災対策ハンドブック」の表紙と目次。出典:「港区マンション震災対策ハンドブック~在宅避難のすすめ~」を作成しました(港区)

今後も力を入れて推進されるのは、「港区マンション震災対策ハンドブック 在宅避難のすすめ」です。2018年3月に高層住宅における防災計画作成の手引書となるハンドブックを改定されました。

「区は各高層住宅の震災対策の取組状況を一目で把握できる防災カルテを作成し、区職員が管理者の方を直接訪問して助言を行うほか、居住者で結成された防災組織に対する防災資器材助成などにより、高層住宅における共助体制の強化を支援しています」(港区マンション震災対策ハンドブックより)。災害時のとっさの判断のヒントから予防対策、防災計画の作成例の提示、区内の防災対策の先進事例の紹介など盛りだくさんの内容となっています。以下のページからPDFがダウンロードできますので、マンション防災に携わる方はぜひ一度見てください。

「港区マンション震災対策ハンドブック~在宅避難のすすめ~」を作成しました(港区)

災害時、在宅避難が原則である高層マンション居住者。充分な準備をして自宅で生活を続けるための対策が大切になります。

「マンションの共助体制を創っていただくのが一番だと思っています。そのために、防災アドバイザーという専門家を派遣して管理組合向けに講演をしていただいたりしています。このハンドブックを作る際にも各マンションを回らせていただき、住民の方々のご意見もお伺いしました。着手しやすいところからまず取り組んでいただきたいという思いを込めて作成しています。管理者だけでなく居住者の方にもお渡ししています」(星野さん)。

共助体制をつくることが大切だけど何から始めればいいのかがわからないという住民の方も多い中、このハンドブックでは、最低限在宅避難時に知っておいてほしい心得がまとめられていて、切り離せばそのままマンション内のエレベーターや掲示板に貼り出すことができる用紙も含まれています。

まずは、ハンドブックから切り離し、マンション内に貼り出して住民の方に読んでいただくことから始めれば、大きな一歩を踏み出せるかもしれません。

帰宅困難者対策も検討しつつ、引き続き区内の整備に取り組む!

丁寧にお話ししてくださった北野さんと星野さん。お2人ともシュッとしててかっこいい!!(撮影:編集部)

区内の主要8駅において、駅周辺事業者や鉄道事業者等が主体となり帰宅困難者対策を推進する組織として、駅周辺滞留者対策推進協議会を設立されています。協議会では、災害時に駅において、地域の被害情報や一時滞在施設の情報提供などを実施し、駅周辺の混乱を防止します。

「立ち上げに関しては区で支援させていただきますが、区が主導する形ではなく、訓練内容などは各協議会で考えていただく形で運営しています」(星野さん)。

区内に暮らす人、働く人、学ぶ人、訪れる人が災害時、混乱状態にならないよう事前対策についてお話をお伺いしました。高層マンションや昼間人口、外国人居住者が多い区の特性に合わせて様々な対策を取られている港区。制度を受けて、次は、一人ひとりの主体的な姿勢がいざという時に力を発揮する行動につながると強く感じました。

次回は、実際に主体的に活動されているマンション居住者の方々の活動について執筆予定です。何から始めたらいいかわからない…と思っている地域の方々!是非、はじめの一歩のノウハウをご参考にしていただければと思っております。

(続く)