東京都23区内の各自治体は、災害への対策に対して各地域に即した体制で過去の経験を活かしながら取り組まれています。地形、災害経験などハード・ソフト面の特性は一つとして同じ地域はありません。それぞれの地域で予測されていること、予防計画、また、今後の取り組みなど現在の状況を各行政区の方々、地域で防災に関する活動をされている方々に伺い、お伝えしていきます。ご自身が住んでいるまちのことはもちろん隣町や連携する可能性があるまちのことを改めて知っていただける機会となるよう取材を続けてまいります。
港区は、人口24万3639人(2018年1月1日現在)、東京の都心に位置し、台場、六本木、汐留、麻布十番といった人気のスポットや、青山、麻布、赤坂、高輪、芝浦などの個性豊かな街並み、歴史を感じさせる文化財や史跡等、伝統的なものと、近代的なものとが調和した、魅力あふれる都市という特徴があります。
優れた都市環境の中にも、災害時の課題は存在しています。区内の6階以上かつ50戸以上の共同住宅、いわゆる高層住宅は、約700棟に上り、約10万世帯が居住しています。大地震発生時に倒壊のおそれがほとんどなく、「在宅避難」が原則の中、居住者はマンション内で自らの力で災害時を乗り越えなくてはなりません。
また、昼間人口が約94万人(2015年10月1日現在)と働く人、学ぶ人、訪れる人が多い中で、帰宅困難者の課題も抱えています。そして、区内にある大使館の数は82(2014年8月20日現在)。日本にある大使館の数は153ですので、過半数が区内に存在し、外国人住民数が1万9844名(2018年7月1日現在)となり、多言語対応を必要とされています。
このような課題を抱える中、港区ではどのような対応をされているのか、港区防災危機管理室防災課防災係 北野由史さん、地域防災支援係 星野あゆ美さんにお話をお伺いしました。
日本の過半数の大使館が港区に在籍。多言語対応の防災マップを作成!
最初に伺ったのは、港区が作成されているマップについてです。浸水ハザードマップ、揺れやすさマップ、液状化マップ、津波ハザードマップ、そして土砂災害ハザードマップです。「土砂災害警戒区域に昨年、初めて指定されました。坂が多いのでイメージしてもらいやすいかもしれないのですが、かなりの数の窪地が港区には存在します」(北野さん)。
指定を受けた港区は、区民の方に知らせるためにまずマップを作成。2017年11月現在、港区で指定されている土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域を示したマップとなっています。今後さらに指定区域が広がる可能性がある港区では、改訂版の作成も予定しています。
続々と作成されている災害地図が出てくる中、特徴的だったのは、やはり多言語対応。マップや防災アプリの情報、「大震災に備えて もしものときの防災マニュアル」が英語、韓国語、中国語そして日本語と4ヶ国語対応されています。
また、次々とお話が出てくる区民への補助制度が特徴的です。まず、家具転倒防止器具等を無償支給する制度。各世帯人数によって異なるポイントの上限があり、その範囲内で指定された家具転倒防止器具等の中から防災対策に必要な器具を選びます。そして、高齢者・障害者・妊産婦世帯・ひとり親家庭の方へは、器具の取り付けの支援も行われています。
■家具転倒防止器具等助成のご案内(港区)
その他にも、「防災士養成講座」を無料で開催されています。防災士とは、”自助”、“共助”、“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人。この資格を取得し、地域の防災活動に参加していただくことで、地域の防災力の向上を目指されています。
年々、資格取得者が増え、現在区内で約600名いらっしゃるとのこと。「2020年度終了までに1000名を目指しています」と、防災支援で地域を回られている星野さんからも地域防災力向上への意気込みを感じました。最近は、育児中の方でも一時預かりのサービスもあるので、受講されるママさんもいらっしゃるとのこと。多世代の防災士が生まれているようです。
災害時に気になるのは、情報伝達。「防災無線の音声が聞き取りにくい」という声にお応えして、「280メガヘルツ帯 防災ラジオ」の配布を始められました。
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