著名人の名前や顔写真を無断で使ったSNS上の広告による詐欺被害が相次いでいる問題で、昨年度に消費者から寄せられた相談件数は1629件で、前年度の10倍近くに急増した。契約金額も約3倍に増えており、国民生活センターは「SNSでの勧誘はまず疑って」と呼び掛けている。
 同センターによると、全国の消費生活センターに2022年度に寄せられた相談は計170件で平均契約金額は234万円だったが、昨年度は1629件で687万円に急増。投資名目の場合、売買よりも契約が高額になることが多く、相談の最高額は1億7000万円だった。
 60代女性は今年1月、SNS広告を見て有名経済評論家による投資相談に登録したところ、アシスタントを名乗る人物から「もっと利益が出る投資がある」などと持ち掛けられ、総額1500万円を振り込んだ。運用利益を出金しようとしたところ、「手数料900万円と税金1300万円が必要」と告げられた。
 警察庁のまとめでは、昨年7月から被害が増えており、今年1~3月だけで計1700件、総額約220億円に上っている。偽の広告を放置したなどとして、被害者や実業家の前沢友作氏らが米IT大手メタ社に損害賠償などを求めて提訴したほか、政府も18日、SNS運営事業者に広告の事前審査強化を要請するなどの総合対策を策定した。
 国民生活センターは、著名人の知名度や実績を悪用した勧誘が横行する一方、SNSでは広告審査が十分に機能しているとは評価しにくく、自衛が必要な状況だと指摘。「振込先が個人名義の場合は詐欺」「安易に資金を振り込むことは控え、不審に思ったらすぐに相談を」などと呼び掛けている。 
〔写真説明〕経済アナリスト森永卓郎さんの名前や顔写真を無断で使い、投資を勧誘する広告。森永さんは取材に「この広告に私は一切関与していませんし、そもそもSNSをやっていません」と答えた

(ニュース提供元:時事通信社)