名誉毀損に関する民事裁判の概要
名誉毀損を理由とする損害賠償請求訴訟について
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/03/07
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
新聞、テレビ、週刊誌などのマスメディアの報道等により、名誉を毀損されたとして、政治家や芸能人といった人たちが、新聞社、テレビ局、出版社などを相手方(被告)とする損害賠償請求訴訟を提起したというニュースを時折お聞きになると思います。この訴訟は、法的にいえば、不法行為に基づく損害賠償請求権を訴訟物(裁判所に審判を求める権利・法律関係のこと)とする民事訴訟になります。
民法709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められており、これを根拠とする訴訟なのです。交通事故や医療過誤の被害に遭った場合なども、この民法709条を根拠に損害賠償請求を行うものであり、名誉毀損の場合も「不法行為」の一つとして位置づけられています。
名誉毀損の場合には、表現の自由との衡量の必要性があることなどから、判例等により形成されてきた法理の理解が重要となっており、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の中でも特殊な面があります。そこで、今回は名誉毀損を理由とする損害賠償請求について取り上げてご説明したいと思います。
なお、名誉毀損の場合には、損害賠償請求のみならず、民法723条に基づいて名誉回復措置(例えば、謝罪広告の掲載など)の請求や人格権(名誉権)に基づく差止請求を行うこともできますが、今回は省略させていただきます。
不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには、まず原告が、以下の各要件を主張・立証する必要があります。これらを「請求原因」といいます。
① 被告が原告の権利又は法律上保護される利益を侵害したこと
② ①についての被告の故意又は過失
③ 損害の発生及び額
④ ①と③との間の因果関係
名誉毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟における各要件については、下表のとおりとなります。
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