4.日常の対策


台風による損害は、建物設備の劣化、老朽化、維持管理の不備などによってもたらされることが多い。このため、日常的に自社施設の老朽化、傷み、劣化の状況を確認し、把握しておくことが重要であり、被災が懸念される箇所への早めの保全・補修が最大の風災防止対策である。

台風の強風による被害を低減するため、日常実施しておくべき建築物の部位ごとおよび屋外設備の対策を記す。

(1)屋根
強風による建築物の被害で最も多いのは、屋根の被害である。一般に風上側で正圧、屋根面と風下側で負圧となるが、その両方で被害が発生する。屋根の被害は、棟、軒先、けらば、出隅といった端部ないしは稜線に多く発生する。

屋根葺き材を飛散しやすい順に並べると、波形鉄板葺き、平鉄板葺き、波板石綿スレート葺き、石綿スレート平板葺き、厚形スレート葺き、セメント瓦葺き、日本瓦葺きとなり、軽いものほどはがれやすいといえる。鉄板やスレートでは、200mも飛んだ例があり、鉄板、スレート、セメント瓦、日本瓦の順に飛距離は短くなる。

(対策)
屋根葺き材は地震対策上軽いものが望まれるが、一方で軽い材料は風で飛ばされやすいため、十分に緊結しておく必要がある。具体的な対策は次のとおりである。
◇コンクリートパネルやスレートなどは、強固に取付ける。
◇屋根は骨組みと仕上げ材料が一体となるように接合する。
◇風の強い地方では瓦葺きの軒先、棟等を漆喰で留める。
◇屋根は周辺部だけでなく、中央部分の瓦も何列かおきに留め付ける。
◇留め金具は増し締めし、防錆処理を施しておく。
◇構造材に腐食がないか、入念にチェックを行う。

(2)開口部
屋根に次いで被害が多いのが外壁で、特に開口部回りに目立っている。窓ガラスが飛散物等により破損した場合、風雨の吹き込みにより被害は建物内部の収容物にも及ぶ。このため、原材料、製品、重要機器などの収容物にも対策が必要である。また、吹き込んだ強風は内部から屋根、躯体へ影響し、被害は建物全体に及ぶこともある。
(対策)
開口部の風災対策は、次のようなものがある。
◇戸・窓にはできるだけ雨戸やシャッターを付けるなどして飛来物から守る。
◇ガラスは網入りのものを用いる。あるいは、飛散防止フィルムを貼付する。
◇窓枠回りは筋交い・耐力壁などにより補強しておく。
◇窓やシャッターは確実に閉めておく。
◇留め金具は増し締めし、防錆処理を施しておく。

(3)躯体・外壁
建物の躯体・外壁が被害を受けるのは、屋根や開口部等の部分的な破損に端を発する場合と設計・施工上の不具合のあるケースである。
(対策)
◇水平トラスや筋交いによって建物がなるべく変形しないようにする。
◇基礎固めは堅固にする。木造では基礎へのボルト締めをしっかりとする。
◇鋼材は、あらゆる方向の力に対して強くする。
◇鉄骨造・木造では骨組に控え柱を配置したり筋交い・耐力壁などにより補強したりする。
◇海浜地域では鉄骨構造の防錆処理を施すとともに維持管理も十分に行う。さらに、設計段階でも錆しろをとるなどの配慮をしておく。
◇留め金具は増し締めし、防錆処理を施しておく。
◇構造材に腐食がないか、入念にチェックを行う。

(4)屋外設備等
屋外の設備や構築物等は破損・飛散等の被害を受けやすく、また当該設備等から飛散した物による構内の他の建物や構築物への波及損害の要因ともなりえる。
(対策)
◇屋外に置かれている物はできるだけ屋内へ移動する。
◇固定が不完全な設備や看板等は固定を徹底する。
◇排水溝のゴミは除去する。