羽田空港でJAL機と海保機が衝突 海保機の乗員5人が死亡(写真:ロイター/アフロ)

羽田空港で日本航空機が海上保安庁機とぶつかり、炎上した事故で、本格的な調査が始まっています。調査や検証のあり方について、考えてみます。

■事例:羽田空港JAL機衝突事故

1月2日夕方、羽田空港でJAL機と海上保安庁の輸送機が滑走路上で衝突するという事故が発生しました。不幸中の幸いであったのは、JALスタッフや乗客たちの適切な判断や行動で乗客乗員379人全員が無事脱出できたことでした。その一方で、海保機側は機長を除く搭乗者5人が亡くなるという痛ましい結果となってしまいました。

事故発生から1週間(原稿執筆日が1月9日)が経ち、現在、運輸安全委員会や警視庁により事故の原因究明に向けた調査が本格化しています。そのような中、パイロット・管制官・気象予報官・客室乗務員・整備士・グランドハンドリングなど民間航空のあらゆる職場に働いている1万人以上が参加している団体である「航空安全推進連絡会議(Japan Federation of Civil Aviation Workers’ Unions for Air Safety:JFAS)が、以下の緊急声明を発表しました。

2024 年1月2日に東京国際空港(羽田空港)で発生した、日本航空 A350 型機と海上保安庁 DH8C 型機 の衝突事故で犠牲になられた海上保安庁職員の皆様とそのご家族に対し、深い哀悼の意を表します。また、この事故により負傷されました皆様の早期回復をお祈りするとともに、関係者の皆様へお見舞い申し上げます。

(中略)

今般、東京国際空港で発生した航空機事故は、残念ながら航空安全が道半ばであることを示すと共に、運輸安全委員会による慎重かつ正確な事故調査が実施されるべきであることは言うまでもありません。従って、憶測を排除し、事実認定のみが唯一かつ最優先であることを正確に理解する必要があります。それを実現するため、報道関係の皆様やSNSで情報発信する皆様は、今回の事故について憶測や想像を排除し、正確な情報のみを取り扱っていただきますようお願いします。

日本国内で航空機事故が発生した場合、警察が事故原因を特定することを目的として捜査することが通例になっていますが、これは国際民間航空条約(ICAO)が求める事故調査ではありません。これまで日本において発生した航空機事故を警察が調査したことにより、事故の原因究明に大きな支障をきたしたという事例はいくつもありました。

警察による調査はあくまでも犯罪捜査であり、事故原因を究明するための調査ではないのです。航空機事故の発生原因には複合的な要因が潜在しているため、事故原因を調査し再発防止に努めるという考え方が ICAO Annex13 の原則です。その理由は、航空機事故の原因を特定することで更なる事故の防止に寄与するという考え方が存在するからです。従って、ICAO に批准している日本は、その真意を正確に理解し、遵守することが求められます。

また、日本では、運輸安全委員会の事故調査結果が刑事捜査や裁判証拠に利用されています。これらの行為は、明らかな犯罪の証拠がある場合を除き、調査結果を利用することを禁止する国際民間航空条約(ICAO)の規定から逸脱した行為であり容認できるものではありません。今般の航空機事故において最も優先されるべきは事故調査であり、決して刑事捜査が優先されるものではないこと、またその調査結果が、再発防止以外に利用されるべきではないことをここに強く表明するものです。

JFAS「2024年1月2日に東京国際空港で発生した航空機事故に関する緊急声明」より一部抜粋