人材不足が深刻になっている今、必要な人材を確保するという人材リスクが改めてリスクマネジメントの焦点になっている。採用はもちろんのことであるが、すでに雇用している人材の維持も大きな課題である。

終身雇用に依存し、離職が例外的な事象であった日本の組織も、もはや安穏としてはいられないのが、現実であろう。企業内教育によって、それぞれの企業に適した能力を育成、強化する、OJTを重視して仕事の遂行を通してノウハウを習得させる、個々の従業員が習得した仕事上のノウハウを体系的、客観的に共有させる仕組みに不備があるという組織では、いったん従業員が離職してしまえば、彼、彼女がもつノウハウも組織から失われてしまう。離職から組織ノウハウの流出を防ぐリスクマネジメントが不可欠となる。

ノウハウ流出を防ぐために

ノウハウの流出を防ぐためには、仕事のプロセスに沿って、仕事で学んだことを体系的に収集、蓄積し、個人知ではなく組織知とする仕組みを構築することである。

プロジェクトやタスクごとに、それに従事する従業員が自分たちで行った仕事の内容を、自分たちで整理、体系化することを仕事の一部にすることである。これに加えて、そうした組織学習の成果をまとめるチームを定期的に編成し、客観的に知識を定着させることも欠かせない。これによって、特定の従業員が離職しても、適切な組織的なバックアップ体制を構築することになる。