本稿では前回に引き続き、国連防災機関(United Nations Office for Disaster Risk Reduction:略称UNDRR)から2023年4月に発表された、「仙台防災枠組2015-2030」に対する各国での取り組み状況の中間レビューから、その内容の一部を紹介させていただく(注1)。本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。
https://www.undrr.org/publication/report-midterm-review-implementation-sendai-framework-disaster-risk-reduction-2015-2030
(PDF 124ページ/約 19 MB)
当サイトの読者の皆様であれば、既にご存じの方も少なくないと思われるが、仙台防災枠組では次の7つの目標(seven global targets)が設定されており、本報告書はこれらを2030年までに達成するために、今後どうすべきかという観点で作成されている。
(a) 災害による世界の 10 万人当たり死亡者数について、2020年から2030年の間の平均値を2005年から2015年までの平均値に比して低くすることを目指し、2030年までに世界の災害による死亡者数を大幅に削減する。
(b) 災害による世界の10万人当たり被災者数について2020年から2030年の間の平均値を2005年から2015年までの平均値に比して低くすることを目指し、2030年までに世界の災害による被災者数を大幅に削減する。
(c) 災害による直接経済損失を、2030年までに国内総生産(GDP)との比較で削減する。
(d) それらのレジリエンスを高めることなどにより、医療・教育施設を含めた重要インフラへの損害や基本サービスの途絶を、2030年までに大幅に削減する。
(e) 2020年までに、国家・地方の防災戦略を有する国家数を大幅に増やす。
(f) 2030年までに、本枠組の実施のため、開発途上国の施策を補完する適切で持続可能な支援を行い、開発途上国への国際協力を大幅に強化する。
(g) 2030年までに、マルチハザードに対応した早期警戒システムと災害リスク情報・評価の入手可能性とアクセスを大幅に向上させる。
(外務省による仙台防災枠組の仮訳から引用・一部加筆(注2))
図1は前述の目標のうち (a) および (b) に関するもので、上側の「Figure 11」は2012年から2021年までにおける、災害による人口10万人あたりの死亡者数、下側の「Figure 12」は同期間における人口10万人あたりの被災者数である。なお図中の「LDCs」は後発開発途上国(Least Developed Countries)、「LLDCs」は内陸開発途上国(Landlocked Developing Countries)、「SIDs」は小島嶼開発途上国(Small Island Developing States)の略である。
いずれも、下に示されている世界平均(Global average)と比べて大きいことが一目瞭然である。特に死者数に関しては、LLDCsやSIDsで世界平均の3倍以上となっており、これらの目標を達成するために開発途上国における災害リスクの軽減がいかに重要かを示すデータとなっている。
特にSIDsにおいては、ハリケーンなどのリスクにさらされている上に、社会インフラが脆弱であることが多く、かつ交通の便が悪いために外部からの支援が難しいことから、これらの国々における災害リスク軽減が急務であることが、過去にUNDRRから発表されている各種報告書などで指摘されてきた。一方でLLDCsについては、このようにクローズアップして取り扱うようになったのは比較的最近である(注3)。すなわち、UNDRRとしても世界各国における災害に関するデータを継続的に収集・分析していく中で、世界規模で災害リスクを軽減するためにどの部分に注力すべきか、常に具体化する努力を続けているものと考えられる。
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