(出典:Shutterstock)

今回紹介させていただくのは、国連防災機関(United Nations Office for Disaster Risk Reduction:略称UNDRR)(注1)から2023年4月に発表された報告書で、2015年に採択された「仙台防災枠組2015-2030」(注2)に対する各国での取り組み状況の中間レビューのためのものである(注3)。したがって連載のタイトルで謳われている「調査研究」とは若干異なるが、世界各国における災害対策の状況を知るために有益だと思われるため、ここで紹介させていただくことにした。

本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。
https://www.undrr.org/publication/report-midterm-review-implementation-sendai-framework-disaster-risk-reduction-2015-2030
(PDF 124ページ/約 19 MB)

なお本報告書は分量が多い上に、皆様に紹介したいデータが多数含まれているため、複数回に分けて紹介させていただきたいと思う。今回はその1回目として、本報告書の位置づけや全体的な状況について説明させていただく。

図1は仙台防災枠組への取り組みに関する中間レビューのためのプロセスがまとめられたものである。図の中央付近にある「Drafting MTR SF reports」という矢印が本報告書の作成作業を指しており、やや左側にある「Consultation, review and reporting」という列にかかっている多数の矢印が本報告書に対するインプットになっている。詳細な説明は省略させていただくが、実にさまざまな組織やステークホルダーからの報告や助言などが収集されていることがわかる。

画像を拡大 図1.  仙台防災枠組に関する中間レビューのプロセス (出典: UNDRR / The Report of the Midterm Review of the Implementation of the Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030)


なお図の右上にある「HLM MTR SF」というのは「High-level Midterm review of the implementation of the Sendai Framework 2015–2030」の略であり、仙台防災枠組に関する意思決定を担う上層部による中間レビューを指す。図の右上の方には、2023年5月に上層部によって行われる会議(HL Meeting)において何らかの意思決定や宣言(declaration)が行われる予定が示されており、本報告書はその会議に対するインプットのひとつとなっていることが分かる。

これらのプロセスを遂行するためにどのくらいのマンパワーが導入されているか、筆者には全く想像できないが、仙台防災枠組に基づいて自国における災害リスク軽減(disaster risk reduction)に取り組まれている加盟国(Member States)側での調査や事務作業も含めて、世界中で相当なコストをかけて作成された報告書なのではないかと思われる。