われわれが日々暮らしている社会では、多様な価値観が存在する。寛容な社会では、こうした価値観の相違は、それほど多くのリスクをもたらすことはない。しかし、米国での動きが典型的であろうが、それらが互いに矛盾し合い、相克し、社会が分断される状況がいろいろな所で見えてきている。企業としては、そうした価値観を示さず、中立的な立場を表明することで、それらの相克から一定の距離を置くとこができるかもしれない。ところが、立場を表明しないこと、それ自体が非難されることもありうる。価値観を表明しても、しなくても、社会から批判され、反感を覚えた顧客が報復として、購買を中止したり、ネットで意見を流したりすることもありえる。価値観の表明・非表明がこうした報復行動を呼び起こすかもしれない、リスクが存在することになる。

■25%が信条と異なる企業や商品をボイコット

実際、ある調査によれば、米国では25%の人が自分の信条と異なる特定の企業やその商品をボイコットしていて、年収が高い層では、この数値が高くなっているという。こうしたボイコットはすぐには企業業績に直接的な影響を及ぼすことはないかもしれない。しかし、長期的にみれば、企業の評判を脅かし、ダメージを与えることになりかねない。

こうした名声リスクはさらに広い範囲での影響にまで及ぶことがありうる。地方自治体が優遇処置を与えている場合には、こうした優遇処置の取り消しが起こりうる。またB2Cのビジネスだけでなく、B2Bでも、自社の評判に敏感な企業にとっては、取引を拒否する理由にもなりかねない。多くの取引に依存している企業にとっては、サプライチェーンの構築、維持にも影響が出てくる可能性をはらんでいる。