学生の4人に1人が就活中にセクハラを経験
第3回:就活ハラスメントというリスク

吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
2023/04/10
共感社会と企業リスク
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
早いもので、今年もあっという間に4月となりました。新4年生は就活まっさかりです。
近年、新卒採用活動はどんどん前倒しとなり、インターンシップで選考を行う企業も増えています。去年の場合は、4月の時点でゼミ生の半分近くがすでに内定を取っていました。といっても、納得がいくまで探したいと多くの学生が就活を続けるわけで、4年生の前期はどうしても出席が飛び飛びになりがちです。
4年生といえば、卒業に向けて大学での学びを仕上げていく時期ですから、教員としては対応に苦慮するところです。決まったら決まったで、内定者研修もありますし、結局、インターンシップが本格化する3年の夏休みから4年の後期にかけて、学生はかなりのリソースを就活に割かざるをえません。今よりは就活の始まりが遅かった6月解禁時代のほうがまだマシだったかも、と思ってしまいます。
就活の長期化のなかで、教員として気になるのが就活ハラスメントです。就活では学生に多大な負担がかかるうえ、企業側に不適切な対応をされて、病んでしまう学生が出ることもあるからです。
自分が悪いと思いこんで抱え込むとさらに傷を深くしてしまいますから、私も毎年、「就活の愚痴でも相談でもいつでも聞くから」と4年生に声をかけ、授業終わりに軽く様子を聞き、立ち話では済まないような話は研究室で聞くようにしています。
就活ハラスメントには、求職者に性的なことを言ったり、性的関係を迫ったりするセクハラ型のもの、わざと威圧的な態度をとり求職者を追い込んで反応を見る「圧迫面接」や他社の内定を断るよう強要するいわゆる「オワハラ」などパワハラ型のものがあります。
特にここ数年、就活ハラスメント問題は注目されています。2019年に大林組の男性社員が女子大生へのわいせつ行為で逮捕されたこと、住友商事の男性社員が意図的に女子大生を泥酔させたうえでの準強制性交等罪で逮捕されたこと、2020年にパナソニック産機システムズの人事課長がパワハラによって内定者を自殺に追い込んだと遺族の代理人が会見を開いて再発防止を求めたことなどからです。
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