社員に対するネットの誹謗中傷に企業はどう対応すればよいのか(イメージ:写真AC)

セガが社員への誹謗中傷に法的措置

2024年7月17日、ゲーム会社のセガが、社員に対する誹謗中傷に法的措置を行ったとするニュースリリースを公開しました。ネットでの誹謗中傷に関連して、被害を受けた社員個人ではなく、企業が法的措置を行ったという事例は記憶にありません。どういうことなのか、今回はこの事例を考えてみたいと思います。

まず、セガのリリースを見てみましょう。

弊社従業員に対する誹謗中傷など度を超えたハラスメント行為等への対応につきまして※
https://​www.sega.co.jp/release/240717_1.html

弊社従業員個人に対してSNS上で度を越えた誹謗中傷や侮辱行為 を行った人物(以下「本件対象者」)に対して、長らく対応を続けておりましたが改善されなかったため、やむを得ず法的措置を講じ、この度、発信者情報の開示請求の申立てが裁判所に認められました。本件対象者を特定した上で交渉を行った結果、本件対象者が弊社従業員に対して損害賠償金を支払う旨とこれまでの誹謗中傷や侮辱行為の削除と今後はそのような行為を控える旨で 示談が成立いたしましたので、ご報告いたします。本件は、裁判に関連する事案のため、お問い合わせは差し控えいただきますようお願い申し上げます。

具体的になにが起きたのかわからない、少々もやもやするリリースですが、仮に誹謗中傷者が特定されたら、その人がまた過剰なバッシングを受けてしまうでしょうから、詳細を伏せるのはやむを得ないことです。

とはいっても、気になったので少し調べてみると、セガの「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、プロセカ)」で、以前からトラブルが起きていたようです。

「プロセカ」は、ボカロ曲を使ったリズムゲームで、初音ミクなど人気ボーカロイドも登場するスマホ向けソーシャルゲームです。2020年に公開され、2022年にユーザー数1000万人を突破しました。22年当時は月間ログインユーザー300万人とも報じられています。10代20代に人気のタイトルで、学生から何度か名前を聞いたこともあります。

この「プロセカ」、2024年3月に運営が参加クリエイターへの誹謗中傷をやめるよう呼びかけたことが報道されていました(※)

※「『プロセカ』運営が参加クリエイターへの誹謗中傷をやめるよう注意呼びかけ…物議を醸すバランス調整については、方針を赤裸々に説明」(INSIDE)
https://www.inside-games.jp/article/2024/03/28/154012.html

運営に対し過度のクレームや要求をいい立てるユーザーへの対応は(イメージ:写真AC)

参加クリエイターはセガの社員ではないはずですが、この呼びかけのなかで、運営に対しても過度の公平性を要求するユーザーがいると指摘していたようです。以前は開示請求手続きしてから相手方が特定できるまで半年以上かかるのが相場でしたが、プロバイダ責任制限法(情報プラットフォーム法)が22年に改正されて、開示請求手続きが迅速化されています。3月に呼びかけをして、それでも収まらなかったので開示請求を行い、中傷者と交渉したとすると、だいたい今ぐらいに結果が出るような気もします。

ちなみに、このリリースには、セガの「カスタマーハラスメントポリシー」(※)へのリンクもありました。
https://www.sega.co.jp/customer_harassment_policy/

セガはどんな行為をカスタマーハラスメントとして想定しているのだろうと見てみたら、最初のあたりは、

・暴力行為や身体的な攻撃行為
・威迫や脅迫、威嚇行為、その他威圧的な言動、極めて乱暴な言動
・侮辱や人格を否定する言動、その他の暴言
・名誉を毀損する言動、経済的信用を毀損する言動
・差別的な言動、性的な言動

など、厚生労働省のガイドラインにも掲載されているような、よくあるカスタマーハラスメント行為が列挙されていたのですが、

・自らの自殺・自傷を示唆する言動を繰り返すことにより、当社従業員等個人に対して強い精神的ストレスや負担を与える行為

という項目もあって、びっくりしました。

こんなことをされたら精神的負担はかなり大きなものになります。今回の法的措置のなかでこういう行為を受けたかどうかはわかりませんが、個人としてソーシャルメディアで発言していて絡まれたのならとにかく、業務を遂行するなかで被害にあったのなら、確かに会社が対応すべき問題だと思いました。