BSI(British Standard Institution:英国規格協会)は2023年1月に、「Supply Chain Risk Insights report」の2023年版を発表した。本連載では2021年6月に本報告書の2021年版を紹介させていただいたが(注1)、今回紹介させていただく2023年版は全体的な構成も大幅に変更され、執筆者陣も大幅に入れ替わっていることもあって、2021年版と比べてかなり印象の異なる報告書となっている。
なお本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.bsigroup.com/en-GB/our-services/consulting/supply-chain-risk/supply-chain-reports/
(PDF 47ページ/約 8.8 MB)
これまで本連載で紹介させていただいている調査報告書の多くは、多数の実務者などを対象としたアンケート調査に基づくものが多いが、本報告書はBSIがこれまで収集・蓄積してきた各種のデータをもとに、内部の専門家が分析・考察した結果が中心である。これは従前からBSIがサプライチェーン・マネジメントの分野に注力しており、「BSI Connect Screen」というサプライチェーン・リスク管理プラットフォーム(注2)を自前で提供するために、この分野の専門家を内部に抱えてきたからこそ可能となっているものであろう。
このような背景から、本報告書では全体的にグラフなどで示されているデータが少なく、文章で説明されている分量の割合が高くなっているが、図1はその数少ない図のうちのひとつであり、貨物の盗難の種類が2021年と2022年との間で、どのように変化したかをまとめたものである。
最も目立つ変化は、ハイジャック(Hijacking)が大幅に減少したことである(もちろんここで「ハイジャック」とは、飛行機だけでなくトラックなど輸送手段全般に対する乗っ取り行為の総称である)。ハイジャックが減った理由については本報告書では言及されていないが、ハイジャックが減った分は他の盗難手段に分散されており、結果として盗難の手段が多様化していることが重要だと指摘されている。
そして企業としては、自社のビジネスに関わるサプライチェーンの構造を十分理解したうえで、相手の手口を知ることが重要であり、この方面に対する企業の取り組みはまだまだ追いついていないと指摘されている。もちろん業種によってはサプライチェーンが広範囲に広がっていたり、複雑な構造になっていることが少なくないため、サプライチェーンの構造を把握することは容易ではない。そこで本報告書では、この分野におけるITの積極的な活用が推奨されている(注3)。
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