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リスク分野の「非財務情報開示」(前)
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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企業に対して非財務情報の開示を求める動きが国際的に強まっています。こうした動きにどこまで対応すべきでしょう? 今回はリスクマネジメントの視点で、非財務情報の開示について考えてみます。
■事例:どこまで非財務情報を開示すべきか?
企業でIRを担当しているAさんは、昨今、企業に求められている「非財務情報開示」の国際的な流れについて頭を悩ませています。
企業がステークホルターに対して行う情報開示については、法定開示が求められているものや、証券取引所が定める適時開示、企業が任意に行う任意開示がありますが、Aさんの勤務する会社はそのいずれに対しても「積極的な情報開示」の姿勢を社長が打ち出していることもあって、可能な限りの情報開示を行ってきています。
Aさんの会社では、有価証券報告書内での非財務情報である「事業等のリスク」「経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況の分析(MD&A)」「コーポレートガバナンスの状況」などをはじめ、「CSR報告書」や「中期経営計画」なども開示しています。しかしなから、近年、非財務情報の開示を積極的に企業に求める声が強くなってきていることから、さらなる情報開示を進めないといけないと思っています。
非財務情報の分野では、2021年のコーポレートガバナンスコードの改訂によって「気候変動リスク」に関する開示が義務付けられたこともあって、気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益に与える影響について、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が求めるものに沿った形での開示に努めるようにしています。
その一方、気候関連情報以外の非財務情報については、特段の要求事項が定められておらず、企業側に任せられているのが現状です。
アメリカやEU諸国では非財務情報の開示の義務化の動きが始まっているようで、日本国内でもいずれ同様の動きになるだろうことは容易に想像できます。
Aさんは、「企業を的確に理解してもらうためにも、非財務情報の開示は重要だ」とは思っていますが、「あまり開示しすぎたら、会社の手の内をライバル企業にさらすことにならないか?」とも感じていて。「どの程度まで対応したらいいのか?」と悩んでいます。
■解説:金融庁が指針を公表
企業を取り巻く事業環境は日々変化をしており、近年はそのスピードが急激になってきています。企業が将来にわたって継続的にビジネスの成果を挙げ続けられるかについて、財務情報のみでは判断が難しくなってきているとの声も多く聞かれるようになってきていることから、非財務情報の開示の要請が国際的に強まってきています。
企業の非財務情報開示については、国内でも積極的な議論が開始されていて、例えば、金融庁では企業の情報開示についての開示に考え方、望ましい開示の内容や取り組みを示す「記述情報の開示に関する原則」を2019年に公表しました。
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20190319/01.pdf (金融庁:2019年3月19日)
さらに、金融庁は、投資家やアナリストが期待する主な開示のポイントや、投資家と企業との建設的な対話のための充実した企業情報の開示を促すため、「記述情報の開示の好事例集」を2018年から毎年公表しています。
また、経済産業省でも、非財務情報の利用者との質の高い対話に繋がる開示、及び開示媒体の在り方について検討する「非財務情報の開示検討指針研究会」が2021年に設置され、昨年10月までに計10回の議論を行っています。
これら各方向からのさまざまな議論を受け、2022年6月に、有価証券報告書に①サステナビリティ情報の記載欄を新設、②人的資本、多様性に関する記載項目を追加、等の方針が示されました。今後、企業の非財務情報の開示には、上記①②の積極的な開示が求められるようになります。
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