(出典:Shutterstock)


今回は、BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)が定期的に発表している調査報告書のなかで最も古いシリーズである「Supply Chain Resilience Report」の2023年版を紹介させていただく。これは2023年1月に発表されたもので、BCIの会員を中心として2022年に行われたアンケート調査の結果に基づいている。2022年版は発表されていないので、今回が2021年版に次いで13回目の報告書ということになる(注2)

なお本報告書は下記URL(BCIのウェブサイト)にアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、BCIの会員/非会員を問わず無償でダウンロードできる。
https://www.thebci.org/resource/bci-supply-chain-resilience-report-2023.html
(PDF 68ページ/約 5.5 MB)


図1は、もしかしたら本報告書のなかで読者の皆様の関心が最も高いデータかもしれない。これは「主要なサプライヤーの事業継続・レジリエンスへの取り組み状況を知るために、どのような情報を求めますか?」という設問に対する回答結果である。最も多いのは「単なるBCPではなく事業継続プログラムとなっている証拠」で58.8%となっている。以下、「事業継続計画と、その責任者が誰か」、「計画に関する演習が行われている証拠」、「認知されている標準に対する準拠」までが数パーセント差で上位4位となっている。

画像を拡大 図1.  主要なサプライヤーの事業継続・レジリエンスへの取り組み状況を知る方法 (出典: BCI / Supply Chain Resilience Report 2023)

以前に本連載で紹介させていただいた2021年版にも同種の設問があり、このときは「計画に関する演習が行われている証拠」と「認知されている標準に対する認定または準拠」が同率でトップであり、今回トップとなっている「単なるBCPではなく事業継続プログラムとなっている証拠」は、前回の3位から8%ほど増えてトップとなった。数パーセントの違いなので誤差の範囲かもしれないが、上位4位の中で若干の変動があったのは興味深い。

また、この設問に関してもう一つ興味深いのは、認証取得に対する要求度合いが具体的に明らかになったことである(注3)。2019年版では回答の選択肢が「認知されている標準に対する認定または準拠」となっており、認証取得を求めるものと、認証取得までは求めないが規格に準拠してBCMに取り組むことを求めるものとが区別されていなかった。これに対して今回は、「認知されている標準に対する認定」(certification)が別の選択肢となっており、こちらが41.2%の回答を集めている。

もちろん「認証取得していなければ取引をしない」とまで厳しくはないと思われるが、サプライヤーに対して認証取得の有無を照会するという人が、少なくとも世界のBCI関係者の中では4割程度いるということである。日本ではISO22301の認証取得数はここ数年ほとんど増えていないようだが、ISOが公開しているデータによると世界的には増加傾向のようである(注4)。日本企業においても、外国企業と取引のある企業は認証取得を視野に入れるべきかもしれない。