「自分らしさ」を重んじ「共感」する時代
第1回:Z世代の渇き

吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
2022/12/06
共感社会と企業リスク
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
近年、Z世代(generation Z)という言葉が、20代前半くらいまでの若者世代を指す言葉として使われています。特によく使われるのはマーケティング論やメディア論ですが、一般語になりつつあります。
このZ世代、物心がついた時にはソーシャルメディアが普及していた最初の世代であり、現在のネット文化にも大きな影響力を持っています。彼らの成長とともに「キャンセル・カルチャー」やネット炎上が拡大してきたとも言えます。日本でも、2015年あたりから広告やウェブ動画、会社役員の発言などがジェンダー問題と絡んで炎上することが相次いでいます。
ジェンダー問題関連の炎上が典型的ですが、炎上は彼らの価値観と古い世代の価値観とのギャップから発生することがあります。つまり、彼らの価値観や感覚を知らないと、気づかずに地雷を踏んでしまうこともあり得るのです。
すでに耳に馴染みのある言葉ではありますが、正確な定義や語源も含めてあらためて整理し、Z世代ど真ん中である今の大学生達の印象と合わせて、彼らの特徴を私なりに解説したいと思います。
日本では、戦後のベビーブームで生まれた世代を「団塊の世代」(1947-49年生まれ)、その子どもたちに相当する世代を「団塊ジュニア」(1971-74年生まれ)と呼んだりします。ほかにも「しらけ世代」(1950-60年代前半生まれ)や「新人類」(1955年-65年生まれ)「バブル世代」(1960年代後半生まれ)「(就職)氷河期世代」(1970-80年代生まれ)「ゆとり世代」(1987-2004年生まれ)「さとり世代」(1980年代後半-2000年代初頭生まれ)など、折々の世相にからめて名付けられた世代があります。
こちらの方は、評論家などが特定の世代の特徴を切り出して名付け、それがマスメディアなどで広く使われて根付くという感じでしょうか。
アメリカにも「世代論」的な表現があります。日本で言う「団塊の世代」はそのまま「ベビーブーマー」、そして1965年から80年生まれの人たちが、クープランドの小説『ジェネレーションX』によって「X世代」と呼ばれるようになりなりました。
続く1981年から1990年代中盤に生まれた世代がXの次なので「Y世代」または「ミレニアル世代」。Y世代の後、1990年代後半からゼロ年代に生まれた子供達が「Z世代」と呼ばれるようになり、この呼び方が日本にも入ってきたわけです。ちなみに、Z世代の次の世代(2010年代-2025年生まれ)は、すでに「α世代」と呼ばれているそうです。
世代論は、基本的には子ども時代から成人して社会に出た頃までの大事件や社会状況などを元に、その世代特有の価値観を推測するものです。ただし、生まれ年でくくるのは雑と言えば雑な話です。
同じZ世代であっても、1995年に生まれた現在27歳の大人と、2010年に生まれた12歳の小学生を比べれば、行動ひとつとっても、かなり違うはずです。要は、その時その時の「いまどきの若い人」の、ざっくりした目安と考えるべきでしょう。
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