半田沼の決壊による被害

桑折町役場総務課課長補佐兼危 機管理係長の菅野泰央氏(左)、半田地区住民自治協議会副会長の半澤和輝氏(右)

桑折町は震災の前から少しずつ防災に取り組んでいた。およそ100年前の1910年、町の北に位置する半田山の半田沼が大雨で決壊し、135戸が流出、500人が被災する被害を与えていた。半田沼決壊から100周年を記念し、2010年には専門家を招き土砂災害の恐ろしさを講演してもらうなど、防災意識向上に努めていた。

「現在の半田沼はコンクリートで擁壁され、以前とは場所も変わっているなどほぼ決壊の心配はないが、東日本大震災ではため池が決壊して福島県内でも7人が亡くなっている。今回の地区防災計画では、地震と沼の決壊による被害を想定した」(菅野氏)。

桑折町半田地区の人口は現在3700人で桑折町の3分の1を占める。地区防災計画を策定した半田地区住民自治協議会は、地区に14ある町内会と、PTA、婦人会、老人クラブなど13団体で構成している。そのうち65歳以上の高齢者の割合は1230人で、3人に1人は高齢者という高齢地域だ。就労者の多くは日中、地区外で働いているため平日昼間に災害が発生した場合は主婦層、子ども、高齢者が中心となって対応しなければならない。そのため、地区防災計画では安否確認を冒頭に挙げ、家族の安否確認手法を確認するとともに、普段からの付き合いを通じて近隣の家族構成を把握するなど、隣近所の安否確認を推奨している。1人暮らしの高齢者や介助の必要な要支援者を日ごろから確認し、避難を支援するためだ。そのほかにも、希望者は町の保健福祉課経由で「避難行動要支援者台帳」に登録することができ、安否確認、避難誘導に活用される。

通信手段としては、防災行政無線を町内会長に配備。電話が使えない状況でも、町内会の住民の安否確認、建物の被害状況、避難所の設置情報などを情報収集できる体制を整えた。