BCMの専門家や実務者による非営利団体BCI(注1)は、2022年10月に「Continuity and Resilience Report 2022」と題した調査報告書を発表した。これはBCIが2018年に始めたシリーズの調査で、2020年からは新型コロナウイルスによるパンデミックの影響でBCM関係者の置かれた状況が激変したことを受けて、タイトルが「The Future of Business Continuity and Resilience」に変更されたが、今年から元のタイトルに戻された(注2)。
なお本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる(BCI会員でなくても、ページの下の方にある「Register for Free」という部分をクリックして連絡先などを登録すればダウンロードできるようになる)。
https://www.thebci.org/resource/bci-continuity---resilience-report-2022.html
(PDF 64ページ/約 4.1 MB)
報告書のタイトルや構成はリニューアルされたものの、本報告書における中心的なテーマは変わっておらず、BCM関係者が果たすべき役割や、BCMという専門分野(discipline)(注3)のあり方のこれからを問うものとなっている。本報告書の目次は次のようになっている。
・Executive summary (要約)
・Business Continuity and Resilience: Strategic vs Operational (事業継続とレジリエンス:戦略的 vs 実務的)
・Resilience at C-suite level (経営層におけるレジリエンス)
・Ultimate ownership of resilience (レジリエンスの究極的な所有者)
・Organizational support for resilience (レジリエンスのための組織的なサポート)
・The contemporary business continuity manager (現代の事業継続マネジャー)
・Resilience in the “new” workplace (「新たな」業務環境におけるレジリエンス)
・The future of a changing discipline (変化していく専門分野(discipline)の未来)
・General views on BC and resilience (事業継続とレジリエンスの全般的な視点)
・Annex (付録)
図1は、「事業継続マネジャーにとって以下の特性がどのくらい重要か?」という設問に対する回答結果である。左側から順に「全く重要でない」(水色)、「あまり重要でない」(黄)、「中立」(紺)、「それなりに重要」(オレンジ)、「とても重要」(青)という回答の割合を表しており、「とても重要」と「それなりに重要」との合計が大きい順に並べられている。
レイアウトの都合上、あまり図を大きく出来ないので、小さくて見にくいと思われた方はぜひ本報告書をダウンロードしてお読みいただきたいと思うが、「A communicator」(コミュニケーションをはかる人)、「Relationship builder」(関係づくりをする人)の2つに対して「とても重要」と答えた人が多いのが目立つ。
実は2020年版と2021年版にも同様の設問があったが、列挙されている「特性」がかなり変更されているため単純比較できない。特に、トップの「A communicator」に相当する特性は過去の調査には含まれていなかったので、もしこれが2020年版や2021年版に含まれていたらどのくらいの位置だったか、大変興味があるところである。しかしながら2位の「Relationship builder」に関しては、これに相当する「Relationship manager」という特性が2020年版で9位、2021年版で11位となっているので、これは2022 年版で大幅に上昇したと言える。
これら2つの特性が重視されていることについて、本報告書では「これからの事業継続/レジリエンスマネジャーは、より戦略的な側に関与し、部門間の関係を強化し、レジリエントな文化の形成を促すという役割を担うこと」が求められていると解説されている(注4)。
ちなみに図1は前述の目次のうち「The contemporary business continuity manager」(現代の事業継続マネジャー)というセクションに記載されている。この「contemporary」をどう訳すべきか、最初はよく分からなかったが、報告書の説明を読む限りでは、旧態依然としたBCM責任者(もしくは担当者)ではなく、かといって遠い将来の「あるべき姿」でもない、現在の我々がいま具現化すべき姿、および現在既に存在している先進的な事業継続マネジャーの姿、というような意味であると思われる。
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