自己の利益優先から負のスパイラルに陥り発言がエスカレートするケース(写真:写真AC)

今回は専門家の発信がある意図を持っているケース、学術的に純粋な発信ではなく別の目的ありきのパターンについて考察すると予告した。このケースは、ある意味、悪意ある行為である可能性があるので最も注意すべきであろう。

「悪意」というといささか表現としては行き過ぎの感もあるが、自己の利益を優先することで、最初は控えめなバイアスだったかもしれない発言を否定できず、徐々に負のスパイラルに陥り、エスカレートして抜き差しならない状態になることは容易に想像できる。最初は「悪意」でなくとも、明らかに論理性を欠く強弁が生まれてしまった時点で「悪意」と表現するに相応しいと思えるのだ。

意図に添わない専門家は登用されない

地上波メディアが登用しない専門家の具体例を挙げよう。

煽る発言に終始する専門家が出演機会を得られるメディアとの相互依存(写真:写真AC)

コロナ禍において、専門家の意見はさまざまであった。しかし現実社会は、インフォデミックといわれるほどの状態に陥ったように、電波系メディアで発信する専門家の評論は総じて危機感を煽る一色に染まっていたといっても過言ではないだろう。この構造は、煽り報道で視聴率を稼ぐというメディア側の意図に合わせて、煽る発言に終始する発言者がメディアに出演する機会を得られる相互依存のかたちだ。

その事実を裏付ける実例として、論理的に是々非々の解説を繰り返す元厚生労働省医系技官の木村盛世女史は、当初こそ電波系メディアの出演はあったが、その後ほとんど出演していない。木村女史の発言の論理性は、落語家の立川志らく師匠の華麗な転身でも証明されている。

志らく師匠は、最初はコロナ煽りの発言をメディアで繰り返していたが、あるラジオ番組で木村女史と共演して以来、考えを根本的に改め、その後の発言が論理的になったことは有名である。強行で感情的な思考を持っていた人物を目覚めさせるほど論理的な専門家は地上波メディアへの出演が難しいのだ。