今回紹介させていただく報告書「Internet shutdowns in 2021」は、インターネットにおける人権問題などに関する活動に取り組む国際NGOである AccessNow(注1)が2022年4月に発表したもので、2021年の一年間に世界各国で発生したインターネット遮断(Internet shutdown)の状況がまとめられている。
なお「インターネット遮断」についてはAccessNowによって次のように定義されている(注2)。
特定の集団や場所に対してインターネットや電子通信を意図的に遮断し、アクセス不能または事実上使用不能にすることで、多くの場合、情報の流れを支配することを目的とする。
つまり、主に国家などの公権力が、不都合な情報の拡散を防いだり抗議活動を沈静化したりすることなどを目的としてインターネットを使用できなくすることである。報告書のタイトルに「デジタル権威主義の復活」(The Return of Digital Authoritarianism)と謳われているのはそのためである。
本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる(注3)。
https://www.accessnow.org/cms/assets/uploads/2022/04/2021-KeepItOn-Report-1.pdf
(PDF 32ページ/約 5.4 MB)
AccessNowは世界各国のパートナーと連携してインターネット遮断の発生に関する情報を常に収集してデータベース化しており、2021年には182件のインターネット遮断が発生しているという。これを国別に見ると、最も多いのがインドで、106件と突出しており、次いでミャンマーが15件、イランとスーダンが5件などとなっている。
図1はアジア太平洋地域におけるインターネット遮断事例の内訳である。アジア太平洋地域で発生した129件のインターネット遮断が「Level 1」から「Unknown」(不明)の4つに分けられているが、これらは次のような分類となっている。
・Level 1: ひとつの市、郡、または村だけが影響を受けたもの
・Level 2: 同一の州や地域の中にある複数の市が影響を受けたもの
・Level 3: 単一の州や地域にとどまらない範囲で影響があったもの
図1を見ると、インドで発生した事例の大半が、比較的狭い範囲でのインターネット遮断となっていることが分かる。本報告書によると、これらのうち85件がジャンムー・カシミール連邦直轄領で発生しているという。
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