大都市と地方都市のセキュリティー意識の違いを実感(写真:写真AC)

セキュリティー対策は誰のもの?

お久しぶりです。平川登紀です。

セキュリティー関連のミーティングやセミナーおよび大学での講義までもがオンラインでの実施となり、まもなく2年です。どこにいても仕事ができるということで、今年10月に佐賀県唐津市へ移住しました。生まれは千葉県、仕事は東京、住居は神奈川と、首都圏エリアから出張以外で離れたことがなかったので、初めて首都圏外での生活を送っています。

唐津というと、何を連想されますか?

唐津城、虹の松原、唐津焼、唐津くんち、呼子のイカなど、たくさんの観光地と名産品がある唐津。とはいえ、私もこちらに来てから、見て聞いて唐津のことを勉強しています。魚は海(釣り)で調達、野菜はご近所から分けていただいたり物々交換をしたりしているので、あまりスーパーへ行かなくなりました。お酒や日用品を買う時くらいです。

唐津の砂浜:筆者撮影

さて、唐津に引っ越して仕事をしている時、セキュリティーに関して「あれ?」と感じることが増えました。私がこれまで研究してきたセキュリティー対策や危機管理は、あくまで大都市のものだったのではないかということです。レポートや講演の内容など自身の研究を見直すと、そのほとんどが人口の多い大都市のためのものだったと気づきました。

「そんな対策まで…?」の深い意味

自身が成田や羽田で保安検査員として働いていたときの悔しい経験が根底にあるので、航空セキュリティーが私の主分野です。

航空分野におけるセキュリティー対策は、どの国においても高い水準で実施されていますから、危険物持ち込みに関して鉄道や船舶など他の運輸のセキュリティー対策モデルとなったり、制限区域設置に関してオフィスビルやイベント会場の保安管理モデルとなったりします。航空セキュリティーをベースにさまざまな場面のセキュリティー提案をしたり、市民に危機管理やセキュリティーの重要性を伝えるためのセミナーや啓蒙活動をしたりすることが私のミッションです。

ある日、私の仕事に興味を持ってくださった方がいました。今までやってきたことについて話していた時、こう言われました。「東京ではそがんこつまでしよるとですか?こっちではそこまでできんよね」。私にとっては常識であり普通のことであったセキュリティー対策が、ここでは違うということを知りました。それから「あれ?」と感じることが増えたのです。

セキュリティー人材がいないとか、コストがかかるとか、さまざまな理由があって「できない」と感じ、ぽつりと呟かれたひと言だと思います。しかし、私にとっては大きな気づきを与えてくれたひとことでした。